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【小説】SNSの悪夢

「お母さん、雨が降ってるよ、お外に行こ。」そう言って長靴を履いて飛び出していった日は、年月とともに去って、雨の日には出かけたくないと思うようになっている。

今日も朝起きると、上から水が・・・雨だ、毎日続けようと思っていた朝の散歩はこれでお流れだ。

子供の時とは違って雨の日には頭痛がする、大人に成ると頭痛がしても家事や仕事を休むことが出来ない。

人間は子供のうちに頭痛を感じて、大人に成るとそれが和らぐくらいでちょうどいいんじゃないか。

「お母さん、お茶ちょうだい。」

「そこの水筒に入ってるから。」

ペットボトルは勿体ないと娘がお茶を水筒に入れて持っていっている、あなたは良いけどね、自分でやったら、言葉が口を付きそうにある。

何も言わなくて良かった事なんて無いのに、今も私は夫や子供に強くは言えない、言葉が刃物になってしまうのが解っているからだ。

その代わりにSNSでは自分を主張する、誰でもない私が存在していて、そこでは思ったことを言える。

近所の人と話していても、昨今は意見ひとつで白い目が迫ってくる、付き合わなければならないご近所さんには主張が出来やしない。

実際に会わない人には何でも言える、あっちも真剣に考えたりしないからね、ストレス解消って何処かでしないとでしょ。

今日もパート先に行ってスマホをいじるのが楽しみだ、スーパーのレジなんて仕事は最下層と思っているのは私だけじゃ無いだろう。

お客様には理不尽に怒られて、でも毅然と断らなければならない時もあって、毎日判断を委ねられているのに、時給が千円にも満たない。

店長は仕事に誇りを持って取り組んでと言って来るけど、その割には時給が低い、それに人が余ったら一番に辞めさせられるんだ。

毎日の楽しみはツイッターで呟く事、問題になっている人を叩くのだ、それで気が晴れるかと言えばそうでは無い。

それでもこの日常を続けるにはちょっとした気晴らしが必要で、その気晴らしは今自分の近くに存在する現実ではいけなかった。

Twitterの中には自由に吐き出せる場所がある、そこは人が居るんじゃない、何を言っても応えない空間なんだ。

私は何時もこう思っていた、この中で有名な人は私よりはいい生活している、怒鳴られたり、理不尽に叱られたりしていない。

そんな人たちには何を言ってもいいじゃ無いか、皆が悪いって言うのを止められない位、有名だけど良くない人物は何を言われてもいいでしょ。

私の言論の自由はSNSの中だけだったから。


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