私は救急車?
「お忙しいとこすいません、今ちょっと良い?」
この人の電話は何時もこれで始まる、この人とは昨年末にバイトしていた肉屋の店主の女性である。
「大丈夫です。」と返す。
「給料払って無かったよね、税理士さんが計算してくれてるから、又連絡するね、それから救急車になってくれる?」
「救急車?」
「そう、救急車、人が足りやんときに来てくれる救急車、(それは違っている)まあちゃん(この店では大体ニックネームで呼ぶ)が救急車一号、さっちゃんは2号ね。」
「今の所仕事してないし良いですよ。」
「良かったー、また電話するから。」
この人こんな感じで何時も急に言ってくる、12月5日も急だったなー、去年の11月に忙しくなったら働いてくれる?と言われて、11月にちょっとだけ働いたけどそれ以降仕事の話が無かった。
12月5日にもう仕事来ないんだ、今日は日曜日だし、そう思って買い物に行って時間は11時半。
電話が鳴った、正確には携帯は鳴らさず、fitbitに通知が来て電話が来ている事が解る、アレッ電話だ、携帯を見ると知らない番号。
「もしもし、○○の高木です、急やけど仕事して貰えないかなー。」
「良いですよ、何時?」
「それが今なのー。」
「今?」
「あの、お昼ご飯食べてからでいいですか?」
「うん、こっちも今からお昼やから、その後一時で。」
簡単だ、身分証明も無し(急だからね)条件も無しの無し無し尽くしで仕事が始まる。
普通に無いけどこれでいい職場なんだ、娘曰く失踪者でも仕事出来る場所だそうだ、確かに。
それから始まったバイト生活は自分至上一番大変なバイトだった、最初は休憩も1時間とって8時間くらいで、遅くなる日もある程度。
このくらいだったら全然大変じゃ無いと高を括っていると、ご飯とって有るから帰らないで食べて仕事してとなってくる。
他の人も大変なので10分位でご飯を食べてそのまま仕事をする、お茶を飲む暇もない、1人の人はご飯食べそびれて泣きそうになっていた。
肉屋の年末は忙しいと気付いてはいた、それでもこれほど忙しいとは思わなかった。
12時間勤務の日もあってこれ以上は無理となった日が31日、ここで松阪肉を貰ってほくほくで家に帰った。
その給料が入って来るウキウキしながら待っていると、税理士さんも流石に1月は忙しいのか数日経って連絡が来た。
「お給料出来たから取りに来て。」
行きますともええ行きますとも、行くと「来てくれた、ちょっと待ってな肉まん温めるから。」
肉まん?話の流れに付いて行けない、どうもお客さんに肉まんだすわと言ったついでらしい。
「良いですよ私は。」と言っても直ぐ温めるからと言って温めて貰った。
自分で考えていたよりはちょっと多い金額の給料と肉まんを貰って帰ってきた。
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