見出し画像

【小説】夢叶えます


仕事が忙しくて”夢 叶えます”を週末になるまでは忘れていた。

週末は休みだから、何をしようと考えていた時、思い出した”夢叶えます”の文字。

よし行ってみよう、幸い定期が使えるから交通費はタダだ。

いつもと違って、ゆっくり職場の方に行ける、近所の喫茶店でお腹を満たしてから、電車に乗ろう。

薄給で働いている身としては喫茶店に入るのは、贅沢の極みでも、たまの休みのモーニング位は自分に与えてもよかろう。

喫茶店は思ったほど人は入って居なかった。

キョロキョロ見渡しながら、座るところを物色していると、空いているスペースがある。

休みにこんなに空いていて、よく潰れないな、何て独り言ちながら、店員が来るのを待っていると、水とお手拭きが運ばれてきた。

この店は昔ながらのお手拭きを出す、自分はそれが好きだった、紙の包装されたお手拭きなら、コンビニでも貰える、布で温かいお手拭きこそ贅沢だ、この店に来る理由は、それだけだった。

「何にします?」ニッコリ笑いながら、ぶっきらぼうな言葉を使って話しかけてくる。

「モーニング。」一言答えると、スマホを見る。

土日の時刻表は違ってたよな、そう考えながら見つめる。

「お待たせしました。」待つほど待ってない時間に、モーニングが運ばれる。

コーヒー、茹で卵、トースト、サラダ、これで儲かるのか?

そんな思いを一瞬だけ頭に過らせて、直ぐに口を忙しく動かしてゆく。

温かいコーヒーとバター付きのパンだけで何時もの数倍は満足いく朝食だ、ゆっくり噛みついてコーヒーを含み、そして飲み込む。

茹で卵は塩を付けて食べる、これにもコーヒーがいる、少し残しておいたコーヒーを口に含んで、卵を飲み込む。

サラダも食べるが、こいつは勿体ないから食べるだけだ。

食べきってしまうと、もう一度スマホを確認する。

時間はたっぷりある、あの店が見つけられなかったら、違う所で買い物でもすればいい、今日は自由だ。

駅に着くと、丁度電車が入って来る、今日は忙しくないから、次の電車でもいいのだが、やっぱり毎日の習慣の所為か走って飛び乗った。

休日は職場に向かう人間は少ないから、椅子は空いている。

自分は空いている椅子には座らない、座って誰かが前に立った時、譲るのは面倒だ。

前に年寄りに変わりましょうかと言ったら、お前は年寄り扱いするのかって怒られたからな。

いつもと違って椅子が空き放題だから、関係ないかもしれないが、用心するにこした事は無い。

考えている間に、何時もの駅に着いていた。




文を書くのを芸にしたいと思っています。 頑張って文筆家になります。 もし良かったらサポートお願いします。 サポートしていただいたら本を買うのに使います。 ありがとうございます。