【小説】SNSの悪夢
スーパーのレジに居ると、社会のヒエラルキーの最底辺に居る気がする、ありがとうと言ってくれる人はほんの少しで、それでも此処に居なければならない。
仕事があるよりは無いよりまし、同僚はそう言って最低賃金に近いこの仕事を受け入れている。
スーパーで働いているのに、スーパーの正価で商品が買えない、バックヤードに置いて有る消費期限すれすれの商品を買って調理して食卓に並べる。
SNSで言いたい放題しても許されるんじゃないか、あちらは良い給料を貰って好きな物を買える生活しているんだから。
そう思って今日も休憩時間はSNSを見ている、政治的な物や人の死はやっちゃいけない、それくらいの常識は弁えてる。
だけど同義的に駄目なのに、罪から逃れるなんて言語道断、何を言っても問題ないよね。
今日もやっぱり不倫のアイツに文句を入れよう、どうせ本人じゃなく事務所で係の人がやってるんでしょ。
不倫なんて無かったって言う発表も無いし、こいつにはお灸据えてやらないとね。
不倫の人間なんてテレビや映画に出る資格は無い、テレビや映画で見かけるのならば、ボイコットすると言ってやりましょう。
最初にそう書いたら、賛同してくれる人が増えて、フォロワー数がぐんと増えて、いいね!が一杯増えている。
ここまで何してもフォロワーさん増えなかったのに、これで認めてくれる人がいっぱいいるんだ。
次は何を書こう、あれ反論してる生意気な、こっちの方が好きが多いんだぞ。
「不倫、不倫と言っているが、それに証拠でもあるのか、こっちは何にもないのだ、これ以上書いたら名誉棄損で訴えてやる」
そんな事は知ったここっちゃない、名誉棄損なんてこっちが誰か知ってる訳でもないのによく言えたもんだわ。
「不倫って雑誌に書かれているのに、往生際が悪いんだね、否定もせずに何言っているの、記者会見開けないのは事実だからでしょ、ばっかじゃない。」
「絶対にテレビに出れないようにしてやる、共演した女優手当たり次第に食っちゃってたんでしょ、こんだけの制裁で済むんだから、有難いと思いなさい。」
「そうよ、この野獣、女の敵、そんなのがテレビに出てるから、教育に悪いんだよ、ちょっとは反省したらどうなの。」
書き出すと止まらない、そろそろ休憩時間が終わる、ここで止めて仕事をしなきゃ、へこへこする現実が待っている。
「だから、不倫なんてしていないんだよ、誰がそんな事が本当だって言ってるんだよ、絶対に訴えてやるからな。」
文を書くのを芸にしたいと思っています。 頑張って文筆家になります。 もし良かったらサポートお願いします。 サポートしていただいたら本を買うのに使います。 ありがとうございます。