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【小説】SNSの悪夢

住んでいた家を片付けて、見張るマンションの前に立った、ここを拠点にするのだ。

不動産屋が来る前にマンションの周りを回ってみた、ちょっと古いマンションだが別に悪い所は無さそうだ。

一時的な家なのだから、中が綺麗なら大丈夫だろう、1人で住むのだから狭いのも良いもんだ。

他人からしたら、そんな事で家を処分するのかと言われるかもしれないが、今はSNSでの反撃と云う名の復讐を終えないと、きっと自分には何もなくなってしまう。

不動産屋には連絡をしてある、ここで待っていたら良いだろう、何気なく前のマンションを見ながら待っていた。

「お待たせしました。」大きな声の挨拶が背中から向かってくる、驚いて振り向くと、友好的に見える人物がいた。

「連絡して頂いた立花様ですよね、私電話で対応させていただいた吉田と申します。」手に持った名刺を差し出してくる。

初めて会う人間は何を考えているか解らないから苦手だ、仕事の付き合いなら仕事を成功させるために協力するのだが、仕事以外で会う人間の頭の中を想像できない。

役を務めるつもりで話をしていこう、なんて言ったらいいかは自分が客役だったらどういうか、シナリオを考えて答える事にする。

「初めまして立花です。」ビジネスマナーで名刺は両手で受け取るってのが有ったけど、これはそんな事はしなくていいよな。

考えながら片手で名刺を受け取って名前を見る、名刺が有ったって本物かどうかは解らない、でも家を案内して貰ったら本物だろう。

「このマンションをご購入ですか?」と愛想笑いで聞いてくる。

「賃貸でも購入でも良いんですが、中を見てみないとね。」今住んでいる場所を売ればなんとかなるだろうと考えて言った。

「そうですね、ご案内いたします。」不思議そうな顔をして自分を見てくる。

急に家を買うと行っても信じないよな、そりゃあそうだよ、自分だって買うって信じられないからな。

普通はローンとか考えるべきものが沢山ある、でも何と思われても構わないから良いか。

「空いているのが1階なんですが、宜しかったでしょうか?」丁寧だが何だか警戒している。

様子を窺っている犬の顔で吉田と云う男が案内してくれる、こちらですの言葉で前を歩く、古いマンションなので、オートロックでもなさそうだ。

1階は防犯やプライバシーを考えると良くないというが、自分としては向かいのマンションが見えればどうでもいい、自分のプライバシーなんて考えるだけ無駄なのだから。




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