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【小説】SNSの悪夢


陽が昇ると起きてまだ暗いうちに運動をするのが日課になっている、運動と言っても散歩だったりジョギングだったりして品格的なものでは無い。

ただ自分の感情を落ち着かせるには外を歩くのが適当だ、そう思って6時ごろから歩くのが自分の習慣になっている。

今日も起きると着替えて外に出た、まだほの暗い道を心臓の鼓動だけを感じながら歩く、昨日何が有っても落ち着くのだ。

外から帰ってくると自分の噂を見る、人によっては見ない方が良いと忠告してくる、しかし自分が俳優として仕事をするようになってから、人がどう見ているかが重要になってきた。

ネットの噂の類は信じてはならない物の代名詞だが、そうは言っても仕事柄気になってしまう。

妻にも気にしない方が良いよと言われていても、仕事に差し障りが出るのが怖いのだ。

怖いと言っても何をする訳でもなく、自分の記事を見ている、マスコミにはイライラさせられるが、それも知られるようになった証、やった仕事を好意的に書いてくれる記事もある、そう思って受け入れる。

それでも朝のニュースを見て何を書いてんだこいつと、突っ込みを入れる時間が多くなってきている。

今日はその日で何だこりゃニュースがネットを埋め尽くしていた、俺が不倫だって?

「俳優 立花勲 不倫か、お相手は映画で共演の○○。」

見る気も起きない記事だ、俺は結婚していて浮気するにしろ、そんな解り易く共演者とするわけが無い。

これは事務所に否定して貰わねば、妻の顔を見ながら携帯を持つ。

「何かあったのね。」妻が聞いてくる。

「うん、酷い事が書かれているから事務所に否定して貰わないと。」

「そんなにひどい事なの?」

「俺が不倫したって書いて有るんだ。」こんな時に下手に言い繕うと疑われてしまう。

別に何をして訳でも無いのにドキドキして言葉を続ける。

「ホントにこんなニュース嘘ばっかりなんだから。」

電話を掛けると、直ぐには繋がらない、いつも携帯は話さない人なのになと考えて切っておく。

電話を切るのを待っていたみたいで、さっきから声を掛けたそうにしていた妻が、こちらを見つめて聞いてくる。

「嘘ばっかりなの?」

「嘘ばっかりだよ、仕事で知ってるだけで、そんなに話もしてないから。」

イライラしながら、もう一度事務所にかける、事務所と言っても携帯だから社長に繋がる筈だ。

「もしもし」小声で女性が出る。

「あれ、社長の携帯だと思ったんだけど。」こちらも小声で呟く。

「えっと、立花さんですか、こちら社長の携帯であってます。」又小さい声だ。

運転中で携帯を取って貰ったのかな、そう思って言葉を続ける。





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