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弱ったこころのゆくへ 後半

一度沈んだ自分の心を復活させる方法について悩むのもまたつらい。
カーテンで視界を閉ざして問題から逃げても心は沈んだままだ。

警察に通報したり、代理人を立てて交渉してもらえばいい、困っているのだから誰かの力を借りよう、アルバイトしてでも費用を用意して!

この極端なゴールを設定したとき、少し力が湧いてきた。
カーテンを開け、窓をいつもの状態に戻すと自分の心もほぼ回復していた。
しかし、右側の首筋が痛くなり首が回らなくなっていた。寝違えたのか。

また日曜がやってきた。

人生で初めてスパイスからカレーを作ろうと思い、それを昼に家族で食べるところだった。
窓から、近所の家を訪ねるB子さんが見えた。
彼女は大体何か近所の人に語りたいことがあるときはお裾分けみたいなものを渡してきっかけ作りをしている。
もしかして、ピアノの話をしているのかもしれないしそうでないかもしれない。
カレーを食べ終わった頃、B子さんは次に別の近所の家を訪ねているのが見えた。おや、これはホントにピアノの話じゃないか。
B子さんはその近所の人と問題の窓の前に立ち、指さして話しをし始めた。
ああ、ピアノの話だ。

しかし、これってどういうことだろう。
「こういう理由だから、窓開けてもいいよね」って聞いて回っているのか。
わたしは近所の人と話をしないので、状況をただ見ていた。

夕方、向かいの家がすべての窓を閉めた状態でピアノを鳴らしていることに気が付いた。


!?


何が起きたかよくわからなかったが、問題は解決していた。
あんなに頑なだったのにどうしたのだろう。

思うことはあったがとりあえずよかった、普段習慣にしている運動を久々にしようと思い、ヨガパンツを履いてTシャツを着ようと思った時メールが来た。

「お元気ですか。B子さん宅のピアノの音は最近聴こえてきますか」
はじめにわたしに代わって音の注意を促してくださったA子さんからだった。
わたしは今日見たことを伝えた。

「それが、その窓も閉めて弾いているようなんです。どなたか注意してくださったのでしょうか」
「よかったですね」
「もしかしてA子さん、何かおっしゃってくださったのですか」
「やんわりと伝えておきました。あくまで一般的な話として…」


神が降臨した。
強力な後ろ盾という感覚だ。


A子さんは、前述したように我が家の中学受験を支えてくれた先輩という側面が強い。A子さん一家はそれはもう輝ける学歴、学歴どうこうというより一家が優しく人当りもよく元気で素敵なのだ。
わたしたち一家は田舎者一家なので、受験のA to Zは彼女に教わった。

「ありがとうございます」ありがとうございます、とわたしはよそ様には見せられないヨガパンツと着替えの途中の格好で正座したまま1時間メールのやり取りをしていた。

そのうちに外出先から家族が帰ってきて「どうした」という状況になっていた。一応事の顛末は伝えたが、そんなに興味はないようだった。

首の痛みが引いたことに気が付いた。

A子さんがピアノの音について注意をしてくださったのはちょうど昼のことだったそうだ。わたしが見たB子さんのご近所巡りはそのあとだ。みんな、あるいはどのお宅かでもNGだったのかもしれないですね、とわたしたちはやり取りをした。

「よほど強い信念!をお持ちなのね」とA子さんに言わせるなんて。

わたしのこころの旅は終わった。
これ『スカッとジャパン』みたいだなー、と思った。

ネガティヴなことに対してのスルースキルはある程度必要だと思う。
しかしながらわたしのように気にしいで心の弱い人もいる。
こんな時は建設的な思考をし、対処しようとすることで「流れ」は変わるものなのだと感じた。今回に関しては神がかり的だが。

END


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