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天気のお茶会

ぐう、ぐう、ぐう……

ふがっ。

目が覚めた。
自分の寝息で目が覚めるとは、まったく間抜けなものだ。

ふぁ~あ、と伸びをする。

さて、茶でも入れようか。
立ち上がると、ぶわっと風が吹いた。

誰かが騒ぎ立てる声が、聞こえるような聞こえないような。
春一番って、一体なんのことだ。

ポットに水を入れて火にかける。

ポコ、ポコ、ポコ、ポココココ……

次第に水が温まってきた。

眠い目をこすっている間にふわり、ふわりと湯気が立ち、水面がグラグラと沸き立ったと思うと、

「おっととと」

噴きこぼれてしまった。

きゃあー、夕立だ!という声が聞こえた気がする。
すまない、すまない。

火を止めてカップに湯を注ぐ。
もうもうと湯気が立ち込めているせいで、じわりと汗がにじんだ。

今年は猛暑になるでしょう……テレビの音がかすかに漂ってくる。

さて、冷めないうちに茶を飲むとするか。

あちっ、あちっ、
いやはやこりゃ熱い。

もう少し置いておこうか。
今年は残暑が厳しくなりそうだ。
すまんなぁ。

お茶が冷める間に、と菓子を手に取った。
もくもくと渦を巻くような、特大の白い綿菓子だ。

食べようとした途端、

「へっ、へっ、へっ、、、ぶしぇえええん!」

特大のくしゃみが出た。

びええええーん!と、小さい子供の泣き声がする。
おへそを取られるだって?
失礼な。そんなものに興味はない。

さて、茶を飲むとしよう。
ずずず……とすすると、途端に空気が冷えてきた。

急に秋になりましたね、なんて、挨拶がそこかしこから聞こえる。

すっかり茶を飲み切ってしまった。
ポットの湯も冷めて、もう湯気も立たない。

まぶたが重くなってきた。
どれ、また昼寝でもするか。

眠りに落ちる途中で、かすかに子どもの声が聞こえた気がした。

「ねえ、どうして冬になると寒くなるの?」

母親が優しく答える。

「それはね、神様が眠りにつくからよ。春になるとお茶を沸かして、冬になると眠ってしまうの。お湯が冷めると寒くなるのよ」

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