私たちは今、力を取り戻している
自粛期間中、私たちはつい、いろいろなことが「できなくなった」と思いがちだけれど、実は、まったく逆ではないかと私は思う。
今まで安易に他人や外に頼っていたことを、私たちは今、ふたたび自分の力で「できる」チャンスを与えられたのだ。
正確に言うと、できることに気づいた、いや、思い出したと言ったほうがいいかもしれない。
外食できなくなった分、自分で料理を作るようになり、レジャー施設に行けなくなった分、自分で楽しみや遊びを作り出すようになり、スポーツクラブに通えなくなった分、近所を歩いたり走ったりするようになった。
考えてみたら、どれも大人になる前は当たり前にやっていたこと。
大人になってからは、お金さえ払えば簡単に手に入るものが増えすぎて、知らずしらずのうちに、何でもかんでもすぐ“外”に求めすぎていた。いかに自分の体や頭を使わずに、ラクすることにお金を払っていたかということを思い知らされる。
外出が制限されている今は、自分でなんとかしようと思えば、ほとんどのことはなんとかなる。
外部に頼れないとなれば、自分が持っているものでなんとかするしかない。
私たちはすでに多くのものを持っている。
心を満たすための方法は、実はとてもシンプルだ。たくさんのお金は必要ないし、わざわざ遠くに行く必要もない。
自分の体を動かし、自分の頭で考え、自分でつくる。その一つひとつを、私は今、十分に味わって楽しんでいる。
それは、とても気持ちがよくて、喜びに満ちている。派手な楽しさはないけれど、ちょっと足取りが軽くなるような、空を見上げたくなるような嬉しさ。
今、私たちは本来持っている人間としての生きる力を取り戻しているところなのだと思えば、この自粛期間も前向きに過ごせるような気がする。
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