クスコ1

シャーマンの微笑み

南米旅行でペルーを旅していた。

ペルーでの目的地はもちろんマチュピチュ。

オリャンタイタンボまでタクシーで向かい、
そこからは列車でマチュピチュ村まで行くことにした。

タクシーが手配される時間まで暇を潰そうと、
クスコの街の中を探索することにする。

クスコはペルーの首都、リマとはまた少し違った雰囲気で珍しい石組の壁や、石畳の道が広がる興味深い古都だ。

眼に映る全てのものが新鮮で面白くて、楽しくて、細道をどんどん歩き抜けていった。

しばらく探索を続けていると、何か売店だろうか。
ペルーの民族雑貨品が置いてあるお店を見つけた。店のそばには中庭のようなものがついている。

その売店では一人の中年の女性が店番をしていた。
多分、としは50代くらいだろうか。
ふくよかな体型に綺麗な長い黒髪が印象的だった。

店内に入って、何気なく品物を見ていると
彼女が私たちに声をかけてきた。

「どこから来たの?」

「日本から!」

「まあ、そんな遠いところから、よく来たわね。
 私は普段は売店で店番をしているけど、
 シャーマンでもあるの」

「シャーマン?」

耳慣れない言葉だ。

「シャーマンって何するの?」

「人々の健康や幸福を祈ったりするのよ」

どうやらシャーマンは巫女や祈祷師のことらしい。

シャーマンだと言う彼女に俄然興味が湧いた。

他愛のない話を進めていくうちに、彼女には特殊能力があることがわかった。

なんと、彼女は相手が何人で、何語だろうが、
インスピレーションでなんとなく何を言っているのか感じ取ることができるらしい。

私たちが日本語で何を話しているのかどうかも直感でわかるそうだ。

シャーマンだからこその能力なのか、彼女だからこその能力なのかどうかはわからない。


本当かどうかは実際のところはわからないけど、南米のクスコの神秘めいた雰囲気と相まったこともあり、半信半疑ながらも彼女のことがますます魅力的に見えてしまった。

人懐こい性格からか、愛嬌のある笑顔からかなのか、
彼女の元には売店で知り合った世界中の旅人、観光客からのたくさんの手紙や写真が寄せられていた。

私たちにもその中のいくつかを見せてくれたっけ。

ひとしきり話した後、彼女は私たちに
「旅の幸運がありますように」と願掛けをしてくれた。

そういえば、足の不調を訴えている同行人の男の子がいて、
その子の足のヒーリングもしてもらったかな。

そのおかげかどうかわからないけど、
心配だった南米旅行も大きなトラブルなく乗り切ることができた。



どこかほっとする笑顔をしてくれた彼女。
彼女が世界中の人から慕われる理由は彼女の人柄もあるんだろう。

旅行が終わったら、
きっと彼女に写真と手紙を送ろう。

そう決めて、クスコを後にした。


ちょっと豪華な、美味しいキッシュを作りたいと思います。