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サトウキビ KN00-114

農林30号 (母本:1903 父本:Mo-F)

生い立ち

 1999年に南アフリカで生まれ,2000年、種子島に播種された.1994年に系統名KN00-114と命名.鹿児島県で2012年,国際法に従い名称を変えずKN00-114として品種登録された.茎数型の早期高糖性品種である.脱葉性が良く,茎が長い.鹿児島県全域で栽培され長らく沖縄県では現地適応性試験が行われた地域で使われていた経緯があり、2022年に奨励された。以来、鹿児島と北大東で多く栽培されている。これまでの命名法ならばNiNだったのかもしれないが,九州の「K」ナタール州の「N」それに播種年度の下二桁「00」そのとき播種された種を番号順に並べて114番目の種という意味で「KN00-114」である.

時代背景

 日本には台風がある.台風が日本に接近・上陸するじきは7月以降が多い.それまでに大きく育てておくと被害率が低いとされている.サトウキビは根元から折損すると収穫部分がなくなってしまうが,途中で折れた場合は収穫して砂糖を作ることが出来るため残る部分が多い方が良い.株出しを早く育てようと考えた時,12月・1月に収穫終了したほうが有利である.このような品種は今までもあったが,他に選択肢がなければまた単一品種だけが植えられるという問題が発生する.リスクを避けるために品種の多様化が考えられた時代である.

草型と特徴

 脱葉性が良く,長く伸びるので製糖期には茎に鞘頭部だけという風景になることも多い.未展開葉は直立するが葉身の途中から急カーブを描いて下垂する.展開葉も直立するのだが葉舌にかなり近い位置で弧を描きながら水平方向へ倒れるのでシルエットはネピアグラスのようにも見える.先端は下向きである.下の方に葉が多くなる形をしているのだが下位葉は脱葉するので初期生育では最上位展開葉より下の位置に葉が多く,製糖期には上の方に葉が集中している.



以下,参考にならない勝手な考察
 いかなる理由によるものかこれまで日本で育種されたサトウキビは「Ni」を与えられてきたがこれが廃止された最初の品種である.とはいえ日本国内では農林30号と呼ばれている.そのためだろうか?県や国が作る資料の中にNIN30やNi30という確実に間違った名称が使われているのを見受けられる.民間がやるならともかく公務員がそのテイタラクではダメだろう.
 サトウキビの青葉は1つの茎につき7~10枚くらいである.葉数が多い品種でも15枚といったところだろう.それよりも下にある葉は枯れる.この枯れ葉が取れやすい品種は「脱葉性」が良いと評価される.枯れ葉は葉面積に含めない.だから青葉が枯れ葉になるとLAIは下がる.一方で枯れ葉がつくる影の面積は変わらないので圃場は暗いのである.脱葉性が良いと発生するデメリットもあるにはあるが,個人的には脱葉性が良い品種の方がメリットは多いと思っている.一応,デメリットについて,雨を受ける面積が減る.干ばつや食害で面積が減っている時はLAIが極端に減る.茎が直射日光に当たるので劣化しやすい,などである.
 閑話休題.この品種は寒くなると枯れ葉が全部落ちてしまう.その時青葉は5~7枚くらいなので鞘頭部にだけ葉があるという形になる.青葉が少なくなる,という事は青葉にあった糖分が茎へ移動しているという事になる.しかも寒くなり始めるとすぐに.これが早期高糖の要因の一つである.
 LAI,という観点からみると日照時間が長いと時期はしっかりと葉面積を維持し,日射量・日照時間が減る時期になると脱葉させることによって圃場が明るくなる.そうするとNARが上がるので長くCGRを高く維持できる.育種担当者は12月に収穫することを想定しているがこの品種は冬場にも徒長するように伸びる性質を持つ.そうすると茎数型だが茎長が長いので多収性品種となる.したがって早く収穫できなかったからといって困ることはない.

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