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サトウキビ Ni23

農林23号 (母本:NiF8 父本:Ni9)

生い立ち

 1994年石垣島で生まれ,1995年に徳之島で播種された.1998年に系統名KY96T-537と命名.鹿児島県で2005年に品種登録され,その翌年に品種名Ni23と命名された.鹿児島県全域および沖縄の一部に普及された.どちらかといえば茎数型品種だが,茎重が長く,1茎重が重くなることがある.台風による折損被害が多いとされている.最大の特徴は他の品種では類を見ない耐干性があることである.

時代背景

 さとうきびは比較的干ばつに強い作物である.これはあくまでイネや麦に比べて必要とする水が少なくてよいという意味であり,水がない地域ではやはり生育が悪い.かといってかつては潅水して育てる,ということもあまり普及していなかった.これは離島の水不足とも関連するので一概には言えないが,本来は潅水を行い,収量を上げることが重要である.淡水が少ない地域であっても収入がゼロにならないからサトウキビを植えて収入を植えているという側面が無視できないのも事実である.低単収地域で淡水が少ないから潅水が出来ないのだととしたら,干ばつに強く,収量・品質・株出しともに安定生産が出来る品種として選抜された経緯がある.

草型と特徴

 未展開葉は直立するが葉身の中程で横へ倒れる.先端は横向き,あるいはやや斜め下になる.展開葉は水平葉になり先端は葉身の中程から垂れ下がり先端は下向きになる.葉が多い位置は最上位展開葉周辺である.茎は直立するが倒伏しやすい.よって畝の上への葉の展開は茎が倒れることで展開する.



以下,参考にならない勝手な考察
 ここでいう耐干性とは干ばつの時,潅水をしなくていいという意味ではない.干ばつの時はどんな品種も減収する.その減収の仕方が半減という品種もあれば,Ni23のように3割減という品種もある.そのような品種であれば雨以外に水源のないところではかつての品種よりは増収するだろうという事である.
 さて,茎が直立するタイプが直立する葉を持つ場合,いくら受光態勢が良くても株の上のLAIはすぐに最大値を超えてしまう.畝の上が明るいのならそちらへ葉を展開するほうが生産量が上がる.つまり株の上に影を作っていた茎が倒伏という手段で移動することで株の上にあった影が畝の上に移動するのだ.これでどちらの環境も生産量は上がる.分げつは株元に発生してやはり直立するので先に成長した茎は倒れてもらった方が成長しやすいのである.
 干ばつに強いとされる品種の葉の形はやはり先端が下を向いて株元と畝の上に水が流れやすい形をしている.潅水できない場合降雨が根に吸収されやすい方が有利なのだろう.この品種は倒れこみ,起き上がり,そこで葉を広げるので水を受ける範囲も若干広い.根がある位置に水を落とさなければ効果は低いと思うのだが実験結果が出ているという事はまず葉が土へ水を導くことは意味があるとみていいだろう.

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