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サトウキビ Ni22

農林22号 (母本:KF89-66  父本:自然交配)

生い立ち

 1995年石垣島で生まれ,1996年に種子島で播種された。1998年に系統名RK96-189と命名。鹿児島県で2007年に品種登録され品種名Ni22された。その翌年には沖縄県でも奨励され両県でNiF8に代わる,とまでは言えないがそれなりに普及している.早期高糖性品種.茎数型でよくしなる茎を持つそして毛群が多いのが特徴.新植はやや細い茎だが株年数が増えると極細になる.しかしそのぶん茎数が増えるので単収が減ることはない.糖度が高いので可製糖量が多いのも特徴である.

時代背景

 さとうきびは,いや,砂糖は海外からの輸入品の方が安い.だから販売価格からサトウキビの価格を決めると農家の手取りは最低賃金以下となる.だから行政は農家が工場に販売する価格を補助している.その価格を決める基準を重量制から品質,つまり糖度にしたのは1994年ごろ.それからの育種は当然のように糖度重視となったがそれは選抜基準が変わっただけで交配は1994年以前に行われていた.本来なら親を選ぶところからが育種である.これまでの親選びのコンセプトが間違っているわけではないが生理学的に相反する部分は存在する.交配から糖度上昇を狙えるようになることは大きな意味があった.重量型と糖度型,多様化といえば聞こえは良いが農家がやりたいことと行政が考えていることが一致するような育種が技術者に求められた時代である.

草型と特徴

 未展開葉,上位葉,下位葉すべてにおいて立葉と水平の中間へ展開し中程から弧を描くように折れて先端は下向きになる.分げつは斜めに伸びるので倒伏しやすい.しかしよくしなるので強風でも折れない.葉が多い位置は群落の上の方だが倒伏すると下の方になり,時間がたつと起き上がり再び上の方になる.受光態勢が生育ステージごとに代わるイメージがある.



以下,参考にならない勝手な考察
 毛が多い品種は嫌われる.薬害が出やすいという話もあるがこれはその通りだと考えている.毛が多いと水滴は毛の表面で玉状になる.だから海水が霧状に飛んできても葉の表面に直接触れることは少ない.農薬も同じである,といいたいところだが展着剤が入っていると水滴の表面張力が失われ毛の隙間に薬液が入り込み,長く影響が出る.Ni22の圃場に除草剤を使う時は展着剤なしをお勧めする.
 細い品種は嫌われる.手刈りだと斧を振る回数が増え,機械刈りだとブロアーと呼ばれる風で葉や雑草を吹き飛ばす装置で茎が飛ばされてしまうからだ.株出すると茎数が増えて茎数が増えると徐々に細くなりそのうち直径が1cm以下になることもある.この品種が嫌われる理由は収量や糖度とは関係ない部分で嫌われている.これだけ嫌われているのに収量や糖度に定評があるためだろう.
 細く,葉数が多く,茎ごと横に広がるLAIを形成するには理想的な形をしている.しかも分げつが増えると自身の茎を細くしてしまうので密植してもしなくても単収は確保される.ただ最大LAIを越えてしまうような分げつ数になってしまうようなら植え替えの時期だろう.さとうきびは間引きが出来ないのだから.


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