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サトウキビ Ni26

農林26号 (母本:RK85-55 父本:RF79-247 )

生い立ち

 1994年に沖縄で産まれ,1995年に沖縄県に播種された.1998年に系統名RK95-1と命名された.2007年に品種登録されNi26と命名された.鞘頭部が小さいために台風被害が発生しにくいとされている.発芽力が弱いのだが,一度根付いてしまえば芽が出るので茎数型の株出し多収性品種である.主に大東地方で栽培されている.秋収穫には向かないが年内製糖ができる程度には早期高糖性をもつ中間型の品種である.黒穂病にかかりやすいのでそこは要注意.

時代背景

 南北大東島は終戦後,さとうきび生産を最も早く開始した地域である.つまり育種の黎明期に作出された品種がいち早く導入され,同じく黎明期に導入された農業機械が定着した島である.品質取引以降,育種の過渡期を過ぎてなお,高糖性品種よりも重量取引時代の品種が多く,糖度と生産量を兼ね備えた品種の作出が望まれていた.育種サイドでも地域性が重視されており,大東地方向けの品種について試行錯誤していた時代である.
 機械刈りの特徴として収穫に人手を出さないという物がある.手刈りでは当たり前に人力で行われるトラッシュ除去は機械刈りでは行われない.トラッシュが多いと運搬効率・価格・収穫効率・工場の操業などに影響が出るので少ない方が好ましい.トラッシュを構成する主な部位は鞘頭部である.これを品種改良で何とかできないか,試行錯誤されてこの品種は作出された経緯がある.

草型と特徴

 未展開葉はやや水平に展開し,先端は横向きになる.展開葉は水平葉になり先端は下向きとなる.最上位展開葉より下の位置に葉が最も多い空間ができる.これは鞘頭部,つまり最上位展開葉から数えて5枚目の葉までの茎の部分が小さい事と葉が垂れ下がることが原因である.通常鞘頭部の大きさは1枚の葉とおなじか葉よりやや短いくらいであるが,Ni26は葉の方が長いのである.



以下,参考にならない勝手な考察
 品質取引制度では収穫物のうち甘くない部分はトラッシュ,甘い部分はクリーンケーンと呼ばれる.サトウキビの茎のうち最上位展開葉から数えて5枚目の葉まで(花が咲いていたら7枚目まで)は甘くない,食べたことがあるがやや酸っぱい.取引はトラッシュを取り除いた重さと砂糖の量で決まるので,鞘頭部が小さいのは品質取引向きである.鞘頭部が小さいのはその部分の節間が短いから小さくなるのだが,Ni26は下位節の節間は長くなるまことに不思議なサトウキビである.
 Ni26はLAIの確保以前に密植をするべき品種である.なぜならば発芽力が弱いからである.発芽しないのではなく発芽した芽が重たい土を持ち上げる力が弱いのだ.かといって土を被せなければ乾燥してしまうのでやはり発芽しない.だから発芽不良を見越して密植を行う.密植に向いているかというと,水平葉で中途半端な位置に葉が多いので受光態勢は悪いのでNARは下がってしまうだろう.しかしLAIは密植の方が安定しやすいので十分な葉面積が確保できれば十分単収は担保できる.よって密植が難しい,つまり手植えをする地域ではお勧めできない.
 鞘頭部が小さいと通常は葉と葉の距離が短く,影を作りやすい.しかしやや水平に広がり垂れ下がることで先端部分は少し開けている.しかも葉が長いので陰ではないところへ展開葉が伸びることがこの品種の最大の特徴であろう.初期生育は悪いが,節数が確保されれば個葉面積によってLAIが確保されるため急に節間が伸びる.

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