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品種改良と品種選び

前の記事のおさらい


 このNOTEはサトウキビについて考えることを目的にしている.名前にもなっているCGR=NAR×LAI.これは個体群成長率(CGR)を増やす戦略みたいなものだ.NARは植物が持つ力によるところと環境によるところが大きいので,人為的に何かを変えようと考えた時LAIを増やす方が,勝手が良い.
 1平方メートルに葉を敷き詰めるにはたくさん苗を植えればいい.極端なことを言えば,茎の太さが3センチになる植物を1センチ刻みに植えて意味あるだろうか,ということである.おそらく,意味はある.
 ものの本によると1平方メートルに植える本数を一株が二株,二株が四株,というように増やしていくとCGRはある程度まで増加して,そのあと頭打ちになるようだ.適切な量以上に増やしてしまうと増えないし,減らない.上記の例で行くと茎径3センチの植物を1センチ刻みで植えると数は増えるが細くなる.よって重さの増え方は変わらない.
 これは一見,意味無いように見えるが,病気,食害,台風などの自然災害で茎が減ったとしても大きな被害にならないという意味もある.ので苗の本数は「自分の目的」に見合った量かどうか考える必要がある.

LAIを増やすということ
 苗の量は収穫量に直結するのだが,そこに至るためには根をはり,葉を広げる必要がある.その葉が光を受けた時葉の影ができるがその影の外に次の葉がある状態が望ましい.しかし影の外側に葉を配置するには限度があるのでむやみに増やすのは良くないし減らしすぎると災害に弱くなる.限度を超えてLAIを増やそうとしたとき,どうしても品種の特徴が重要になる.その品種を選ぶにあたり,差し当たって自分の畑(あるいは地域)の植え方をまずイメージしなければならない.

LAIの最大値を増やすということ
 上記のように書くと栽植密度ですべて決まってしまうようだが実はそうではない.なぜなら葉の形が変わると光の当たり方が変わるからだ.この考えは受光態勢と呼ばれており,数式で良し悪しが説明されている.品種によって葉の大きさ,長さ,幅,角度,高さ,薄さなどが変わる.下記に例を挙げるがこれらをうまく組み合わせるとLAIの最適値が大きくなるケースがあるんじゃないかと考えている.イメージとしてはLAIが増えても明るさが変わらない状態である.

LAIを増やすとどうなるのか
 葉が光を受けて光合成をする.その光合成をする面積が増える.光合成は光が強い方とその量が増える.だから葉の面積は早く最大値になった方がいい.早く面積を増やすには葉数を増やす方が良くて,葉を増やすために茎を増やす手段が有効である.しかしLAIが増えると他の葉に影を作りやすくなる.だから同じLAIでも影を作りにくい角度である方が有利である.LAIが最大値になると,どんな角度でも影はできてしまう.陰にある葉は光が弱くても光合成を行う.だからといって葉が多い方がいいかというとそうでもなく,多すぎるとかえって成長速度は落ちるので脱葉したほうがいい.

  •  長さ2メートルの葉1枚と,1メートルの葉が2枚

  •  長さが同じだけと幅が6センチの葉が1枚と3センチの葉が2枚

  •  長さと幅が同じだけど地面に垂直な葉と平行な葉

  •  長さも幅も角度も枚数も全部同じだけど茎が垂直な場合と斜めに倒れている場合

  • 隣の畝からのび太はと重なりすぎていないか?

  •  2枚の葉が重なっているとき,薄い葉と厚い葉


機械植えした9か月目のサトウキビ群落の中
まだ光が地面に届くという事はLAIが足りていない

品種を選ぶということ

 品種改良は目的をもって行われることである.一番の目的は生産量を上げることだが,その目的は誰のための,いや,いつの時代の物だっただろうか?普遍的な側面はあるとは思う.しかし道具や取引方法など時代とともに変わる部分もあるのも事実だ.栽植密度も時代とともに最適解が変化している.品種の持つポテンシャルは疑うべきではないが,そのポテンシャルを引き出せているかどうかは疑問視するべきであろう.現代,日本のサトウキビの品種は40種類近くある.使われなくなって久しいものも数多く存在するがその中から自分に合ったものを選ぶことはできると思うのだ.
 冒頭で説明したように,自分の畑(あるいは地域)の植え方をまずイメージしてみて大体の茎の数を把握するところから品種選びは始まる.

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