サトウキビ NiH25
農林25号 (母本:H73-6110 父本:NiF4 )
生い立ち
1985年ハワイで産まれ,1986年に沖縄県に播種された.1988年に系統名RH86-410と命名された.2008年に品種登録されNiH25となった.日本で使われている唯一のハワイ生まれの品種である.夏植え用の茎重型品種.茎が長く倒伏する.特に肥沃な土地でその傾向が強い.糖度は高いが中晩性である.萌芽性が悪く株出しには向かないとされている.主に宮古島で栽培されている.
時代背景
かつて,ハワイ州は共和国だった.1897年にアメリカ合衆国と合併した.第2次世界大戦後の1959年に法案が可決されアメリカの50番目の州としてハワイ州が誕生した.ハワイのサトウキビ育種は共和国時代の1895年に創設されたサトウキビ研究所で,合併後の1905年からスタートしている.当時のハワイはサトウキビのプランテーションが存在した.新植,株出しともに2年間栽培して収穫するのが一般的でその単収は20t/10aを程度だったといわれている.常夏の島,なので当然,新植はいつ植えても夏植え.逆に2年栽培すればいつでも収穫できるので周年栽培・周年収穫という類まれなる農産物だったそうだ.なお,ハワイのサトウキビ産業は1996年に最後の工場が閉鎖して以来大規模な生産は行われていない.
この頃の日本は日本全体で農家の数が減少し,サトウキビも農家・面積・収量が減少し恥得た時代である.
草型と特徴
未展開葉は直立するのだがすぐに湾曲して中程から先端部分だけが横に倒れ下向きになるか,鉛直方向に垂れ下がる.展開葉は水平葉になりやはり先端部分は下向きになる.畝の上にも位置葉が多いが株の高い位置にも葉が広がっているので株元は全体的に影ができる.葉幅が広いので他の品種に比べて影の範囲が広い.それでいて倒伏するので葉を広げる位置は広範囲になる.
以下,参考にならない勝手な考察
自然災害の一つに台風がある.暦の上では二百十日および二百二十日ごろ,つまり旧暦の7月下旬から8月上旬に台風が多いとされる.さとうきびが台風被害に遭いやすいのは風を受けやすく,折れやすい形をしているからである.一方でサトウキビは折れた残りの部分を収穫しても砂糖は取れるのでゼロにならないという利点もある.したがって台風のリスクに対し,最初から大きく育てて被害で折れたとしても残った部分が多ければ被害率は少なくなるという対策をした.これが夏植えである.台風被害にあうのが育て始めて5~8か月の春植・株出しより1年近い夏植えの方が,けがが少ない.その時倒伏していると風が当たる面積が少ないので折れにくい.という戦略である.
LAIについて,葉幅が広く,展開葉は畝へ伸びるので展開しやすいのだが分げつは少ないのであまり有利とはいえない.だから夏植えにしてゆっくり育てるイメージである.私の場合,そのイメージの中でNiH25は常に倒れている.倒伏は必ずしも悪ではない.倒伏した後,株元に萌芽した分げつは上の影が減るのでより明るい環境で育つため良く伸びる.これが7月から8月ごろに萌芽した分げつであれば,2月か3月ごろには収穫茎として判断され増収につながる.暖冬であればなおさら伸びる.植え付けた年のLAIは少し減るだろうが2年目,つまり年明けしたあとの分げつがその葉面積の上に新たに葉を広げていくのでLAIはさらに拡大するのである.
だが,倒伏が嫌われる一番の原因は以下のようなものであろう.機械の通り道がなくなる.茎が畝の上で気根を張り根付いてしまう.土が付着してトラッシュが増える.機械刈りではロスが増える.などであろう.倒伏は1茎重の重たいサトウキビの宿命である.収穫ロスが出ると収量性があっても収量は下がる.よって機械収穫を念頭に置くと多収性品種とは茎数型になってしまうのである.
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