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サトウキビ Ni21

農林21号 (母本:NiF8 父本:Ni9)

生い立ち

 1993年宮古島で生まれ,1994年に同じく宮古島に播種された.1996年に系統名RK94-4035と命名.2005年に品種登録され品種名Ni21された.NiF8とそれよりも優れているというNi9を親に持つ後代で初めて品種化された.芽子が大きく,突出しているのが特徴.茎重型で脱葉性が良く手刈りに向いているとされている.沖縄県久米島町で栽培されている.主に台風時に折れにくいという特性を買われて,発芽が悪いにもかかわらず根強い人気がある.

時代背景

 NiF8が日本一栽培面積の広いサトウキビになった後,NiF8が栽培しにくい地域があったとされている.そのため育種目標も地域ごとの問題を解消することが目的になっていた.久米島もそのような地域の一つで当時F177が広く栽培されておりNiF8は定着せずそれよりも後に品種登録されたNi9が増え始めていた.F177は台風に弱く,Ni9は黒穂病に弱いという弱点があったため新しい品種の開発が望まれていた.そのような地域でニーズのある品種を親にした品種を作出しようという考えが形にされていった時代である.

草型と特徴

 葉色が濃く,立葉ではあるけれどやや長めの幅広の葉が広がりながら展開し,下位葉では水平に展開するので背が高い印象を受ける.未展開葉も展開葉も先端はしなるように下を向く.先端が上を向いている葉が無いように見える.風が強いと倒伏しやすい.下位葉は脱葉するので,葉が多いのは最上位展開葉付近となる.株の上,畝の上どちらでも群落の上の方で受光するタイプである. 



以下,参考にならない勝手な考察
 姿形が美しい,というのが最大の特徴である,という人もいるが最大の特徴は発芽力が弱いことだと思う.その発芽力に大きな影響を与えているのが芽子の形じゃないだろうか.茎から飛び出て休眠しているのでちょっと外力が働くと傷が入るのである.機械化には最も相性の悪い形質だと個人的には思っている.だが,発芽力があるからといって台風で茎数を減らしてしまうような品種は,買入糖度が下がってしまうのだ.やはり折れない品種を,というのが正直なところなのだろう.
 受光態勢はとても悪いが少ない葉でLAIが稼げるのは葉が長いためであろう.だがLAI拡大にとって有利な形質とは言えない.また大柄で茎数が少ない,節間が長い.そして脱葉してしまうので株元に空間ができる.だからLAIが広くなる要素は個葉面積だけなのだが,CGRは高い.
 地際にできる空間は重要である.サトウキビに限らず畑地は土からの呼吸で地際の二酸化炭素濃度が高くなる傾向にある.葉が多いとその周辺の二酸化炭素は葉に吸収され濃度が低くなるのだが地際に葉がないとこの二酸化炭素は拡散するときに葉の多い場所で吸収されるのである.そうするとNARが高くなる.Ni21のCGRが高い秘密はそのあたりにあるのではないだろうか?

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