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サトウキビ NiTn18

農林18号 (母本:KF81-39 父本:ROC11)

生い立ち

 1990年台湾で産まれ.1991年に鹿児島で播種された.1994年に系統名KF92-93と命名された.2003年に品種登録され,その翌年にNiTn18と命名された.典型的な茎数型であるが,極端に細いわけではない.低温発芽および萌芽性に優れた株出多収性品種である.一方で黒穂病に弱いという弱点を持つ.主に種子島で栽培された.

時代背景

 鹿児島県は白砂糖の生産地としては世界中でも北限に近い地域である.熱帯性の植物であるさとうきびにとっても生存するのがやっとである.特に霜害が発生すると翌年の萌芽率が落ちる.そのため毎年植付を行うか,マルチをかぶせて越冬するという手段が取られていた.サトウキビ栽培は植付のコストが高いため株出回数を増やした方がコストダウンになる.とはいえマルチにかかるコストも可能であれば下げたい.農家の数も減りマルチのために人を集めるのにも苦労が出ている.もしそんな人材がいるなら少しでも植付の方に人を回したい.マルチをしなくてもよい品種が生まれた背景にはそんな事情がある.

草型と特徴

 葉身は細身で未展開葉は直立するが,先端部分は横向きに垂れる.展開葉は直立と横向きの中間くらいで先端部分は下向きになる.分げつは横に伸びて湾曲しながら上に伸びる.最終的には倒伏するので分げつの下葉は株元に,上位葉は畝の上で展開する.葉身は茎に対して直立するので水平葉と同じように角度で展開する.したがって葉が展開している位置は株の真上よりも畝間に向かって多い.高さは最上位展開葉よりも下の位置になる.



以下,参考にならない勝手な考察
 
 主茎だけが伸長している時は直立葉だろうが水平葉だろうがあまり関係なく,葉数が増える速度が速い品種の方がよく成長する.初夏ごろの分げつが増え相互遮蔽が始まると受光量が大きい方,つまり水平葉が生産量が上がる.LAIが最大値を超えると受光態勢が良い方,つまり直立葉の方が生産量が上がる.余談だがこれらを混植したほうが生産量は上がるという研究があるので,混植は敵ではないのである.
 閑話休題.では,直立葉の品種と水平葉の品種,どちらをいつ収穫すべきか?形質だけで見ると収穫期に生産量が上がりやすいのは直立葉である.1月より3月の方が増収するなら3月に収穫すべきだ.水平葉は初期生育が良いので1月でも3月でもあまり変わらない.ならば1月収穫してもいい.そうすると低温萌芽性の特性を生かし株出しした時の栽培期間を長くして増収させるほうがいいだろう.
 ところで,未展開葉は直立するが,先端部分は横向きに垂れる.これは低温萌芽性をもつ品種の特徴だろうか?受光態勢が悪く,群落の上の方で光を受けて,地際は暗くなる.これは同じ低温萌芽性をもつNi12と同じ性質である.予想の域を出ないのだが,光が地面に届く環境は,放射冷却が起きた時,気温が下がりやすいのではないだろうか?逆に,地面の上に葉が被さっていると,上昇気流は地面まで影響しにくい.はずである.


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