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サトウキビ NiTn19

農林19号 (母本:F172 父本:RF81-208)

生い立ち

 1993年台湾で産まれ.1994年に種子島で播種された.1997年に系統名KF93-T509と命名された.2004年に品種登録され,NiTn19と命名された.日本で作出されたサトウキビの中では珍しい,茎数型の晩生である.特に石垣で栽培された.早期高等品種に比べて糖度は若干落ちるが糖収量は高かったとされている.当初の目的は夏植えで茎数の多いサトウキビ,であったがすべての作型で多収であった.

時代背景

 NiF8が日本全体で普及した理由は,糖度が安定しており夏植・春植・株出のどれでもそれなりの単収を得ることが出来るからである.夏植えに特化した品種や株出しではNiF8に勝てる品種,あるいはもともとNiF8が普及しなかった地域ではNiF8以外の品種が試されてはいた.そうしている間にNiF8は栽培面積が減って新品種が増えていくのだが,サトウキビを栽培する上での問題点が解決したかといえばそうではなかった.例えば低単収地域はもともとNiF8ではダメ,他の品種でもダメという問題を抱えていた.早期高糖や夏植え多収性という事を度外視して,単収,特に株出しの単収を上げることを第1の目的として,日本全体の生産量を上げようとしていた時代である.

草型と特徴

 葉身はやや細め,未展開葉は垂直で先端部は上を向く.下位葉は葉身の基部に近い方から水平葉になる.その先端は下を向いているが急角度ではないので水平に見える場合もある.最上位展開葉はその中間なので横へ扇状になる.鞘頭部から地際に近付くにつれてイネ科型から広葉型へ変化していく特徴を持つ.鞘頭部から最上位展開葉の下あたりが葉が多いが受光態勢は良い.ただし分げつが増えると下の方に葉が増えてくる.



以下,参考にならない勝手な考察
 サトウキビは1度植えたら4から5年は栽培できる比較的寿命の長い作物である.だから株出しをすると植付けにかかる初期費用がいらなくなる.低単収地域ではほかの地域よりも生産性が低いので単収が上がるからといって毎年夏植えするだけの財力が保てない.ゆえに株出し多収性を重視した.
 NiF8が早生で低単収なら晩生だけども高単収なものを,という発想だったのだろう.すべての畑を12月から1月に収穫するはずはないので,3月収穫用の品種があってももちろん構わない.黒穂病に強く,茎数でLAIを稼ぎ,萌芽性が良くて受光態勢もいい.単収も高い.すごく理にかなった戦略である.しかも細くて茎数が多い特徴は機械で採苗し,械植付けするには最適な形質である.適期植付けが行いやすい.
 葉の形は細くて立っているので受光態勢がいい.葉が上の方にあるけれど畝の上は明るかっただろう.そこへ下葉が横へゆるやかに広がる上に分げつ茎の葉がさらに直立して広がるので空間的に隙間なく葉が増えていく.弱点があるとしたら倒伏することである.
 余談だが,夏植えをすると収穫から植付けまでの期間圃場が裸地になり土壌流出につながり海洋汚染が発生しサンゴが育たなくなるという懸念がある.だったらサトウキビ増やして工場を立てようと考えてほしいものである.


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