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サトウキビ Ni17

農林17号 (母本:NiF8 父本:RF79-247)

生い立ち

 1990年沖縄産まれ.1991年に宮古島で播種され1993年にRK91-1004と名付けられた. 2003年にNi17と命名された.主に沖縄では久米島、鹿児島県では奄美大島をはじめ沖縄,特に久米島で栽培された.特徴として台風に強く株出多収性であったとされる.毛群が多く触ると痛い.茎が太く茎重型だが茎数はそこそこ多い.

時代背景

 鹿児島県はサトウキビの生産量が減り続ける理由として夏植えが株出しにならないことに目を向けていた.株出し多収性品種を作出するにあたり新たな品種を試すものの定着せず元のNiF8に戻ってしまうあるいはサトウキビではない作柄を植えるということが繰り返されていた.だとしたらNiF8の後代を品種化すればいいだろうという考えは兼ねてからあった.NiF8が品種化される前から母本に,父本に,と工夫されてはいたものの10年越しでようやく使える品種が作出されたのである.
 

草型と特徴

 毛群が多く触ると痛い.未展開葉は横向きに湾曲するように折れて葉先は下向きになる。展開葉は直立せず水平に展開し、やはり先端は下向きになる。上位葉でさえも横へ横へと展開する.そのため最上位展開葉よりも下の方に葉の量は多くなるのだが,両は少ないが未展開葉も横へ伸びるので最上位展開葉のよりも上の方で影ができる.影の位置は株の上,畝の上の両方で多くなる.



以下,参考にならない勝手な考察
 毛群が多いサトウキビは潮風を受けても塩分を含む水滴が毛群の先端に付くため、葉面に直接触れることが少ない,と私は勝手に妄想するのだがNi17は毛が多く潮風害に強いとされている.
 上と下で影を作る構造はNiF8に似てなくもない.しかし未展開葉,上位葉の位置は横へ伸びるので,立葉型のNiF8とは違った広葉型である.幅広の水平葉で水平に展開しながら先端が下向きになっているということは,葉にあたった雨水は葉身の頂点を分水嶺に,茎側と葉の先端側の2方向へ流れていくということである。構造的には未展開葉に近い葉に当たった雨水は茎の近くへ,下葉に当たった雨水は遠くへ多く流れるように見える.戦略として茎に近い方へ水が流れるということがイネ科にとっては良いだろうが直立する葉は水を受ける範囲が狭いという欠点もある。農業的な戦略としてはよく水を受けて,畝間あるいは隣の畝に潮風害で葉の表目にある塩を洗い流す戦略も面白い.
 幅広で水平葉というのは上部で光を受けるので群落全体が暗くなる構造である.しかも分げつ茎が少なくないとなれば葉数も少なくないので暗い位置にLAIは広がり易かったはずで,NiF8のような多収性理論とはかけ離れている.が,しかしこの品種が普及したのはNiF8が使い物にならない台風常襲地帯の久米島である.NiF8は葉身裂傷や潮害で葉が無くなり易かったのだとしたら,どうだろう?NiF8とは全く違うタイプの形質が選ばれて当然ではないだろうか.そのような品種がNiF8の後代から出てきたのも興味深い事実である.


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