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サトウキビ NiF4

農林4号 (母本:F146 父本:Co29-116)

生い立ち

 1970年台湾産まれ.翌年,種子島で播種される.1973年に系統名KF71-194名付けられる.品種登録期間は1983年からで,品種名NiF4と命名される.主に鹿児島県で栽培されていた.その翌年,沖縄県に配布され,1985年に沖縄県の奨励品種となった. 中間型の品種なので茎数も1茎重も1番になれないタイプのサトウキビ.干ばつになると海綿化する弱点があるので夏植え向きではないとされていたが,沖縄では広く栽培された.根系は深く伸びるため干ばつに強いかと思われたが作土層が浅いと海綿化するようで土地を選ぶ側面もあったと言われている。また株出し収量は不安定だった.葉の広がり方のせいか,東南アジアのように畑の傍で防風垣に使うことを提案した文献もある.

時代背景

 台湾は1895年の下関条約において日本に統治された.その間にさとうきびの交配育種が行われており,戦前から沖縄へいくつもの品種を送り出していた.終戦直後台湾は中華民国,沖縄県はアメリカ統治下となった.そのころ琉球政府が敷かれていた沖縄県では終戦直後は食糧難という事情もあって換金作物であるさとうきびの栽培は米軍によって禁止された.しかし沖縄は製糖工場を起業し,さとうきびを増やし,1972年に本土復帰するまでに分蜜糖15工場,含蜜糖4工場を抱えるほどさとうきび生産は増えていた.そんな中,台湾に交配を依頼し、日本で育種されたのがこの品種で,Niを冠する品種の中で沖縄県が奨励する最初の品種となった.

草型と特徴

 未展開葉は直立よりはやや開き気味に伸び,先端は横向きに垂れる.下位葉でもやや直立した葉の形は同じだが葉身は下垂するのでそのシルエットは大きく弧を描く.直立して横に垂れるので株の上では下部まで光が届き畝の上には横へ広がる葉が光を遮る形になる.株出しになると株の上でも横に伸びる葉が光を遮る形になる.葉が多いのは最上位展開葉よりも上の位置でどちらかといえば株の上に葉が密集する.



以下,参考にならない勝手な考察
 ただでさえ狭い通路で葉が横向きに伸びるのは邪魔だっただろう.畝を崩すのも培土するのも手作業であることも少なくない.この頃の農家は剥葉といって1つの茎の葉数を5枚程度のこして残りは捨てるということをしていた.風通しが良い方がよく育つ,というのがその理由だ.NiF4は一度上に展開し,先端が弧を描くように垂れ下がる.葉が最も多い位置は最上位展開葉よりも上になるが,株の上よりも畝の上の方が葉が多い.したがってこれまでの品種よりは葉が作業の邪魔になっていたのだろう.しかし逆に言えば畝の上ではきちんと光を捕まえていたのではないだろうか.それでいて株の上は受光態勢が良く,葉が多い割には明るいのだ.
 一方で株出しになると茎数が増えて株の上も垂れ下がる葉が覆い隠すケースも出てくる.株出しが不安定だった理由はこんなところにあるのかもしれない.そう考えると株出し多収性は新植から株出しになっても受光態勢が大きく変わらない方がいいのかもしれない.


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