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サトウキビ NiTn20

農林20号 (母本:NiF5 父本:NiF4)

生い立ち

 1990年,台湾で生まれ,1991年に徳之島で播種された.1994年に系統名KF92T-519と命名.当初は鹿児島で試験されていたが2004年に鹿児島県および沖縄県の奨励品種として登録された.品種登録された翌年,品種名NiTn20と命名された.萌芽性が良く生長が早い性質を買われ,主に低単収地域において12月収穫を意識して育種された経緯がある.細く,節が多く,茎数型の株出し多収性品種である.茎の形が特徴的で弱い稲妻型の屈曲がみられる.

時代背景

 沖縄でも鹿児島でも農家の数が減少し,耕地面積が減少し,工場の数も減少していた.日本全体のサトウキビを増産させるために面積,収穫量,糖度,を増やしたい.しかし工場の数は減っているので操業期間や操業効率といった部分で見直しが図られていた.夏植えは植えたら1年半後に収穫するので2年1作である.これを株出しにすることが手っ取り早く面積増につなげることが出来る.過去の操業実績に基づくと2月から3月に収穫することが増収につながるとされていたが,実際は操業期間を長くするために1月あるいはさらに早く操業が始まり「低単収・低糖度」となる傾向にあった.そうするとそもそも単収が高い夏植えを12月に収穫して,株が立たないという結果につながっていた.これが,夏植えが株出しにならない大きな理由である.面積を増やすためにも工場の早期操業開始を実現するためにも,低温萌芽性が求められた時代である.

草型と特徴

 幅広の葉で,未展開葉は直立に近いがやや開いた形で展開し先端は横向きである.最上位展開葉は未展開葉よりも横向きで先端部は下垂する.下位葉は水平に近く葉の先端は弧を描いて下垂する.葉が多い位置は最上位展開葉よりもやや上になる.水平葉になる品種の中では受光態勢は良い方だが畝の上に葉が広がる傾向にある.


以下,参考にならない勝手な考察
 適期植付け,適期収穫は人手が買う干されてはじめて可能である.農業の労働人口が減ってしまうと機械化して効率を上げる.しかしこの農業機械が必要十分には行き届いていない.なぜなら機械は高いからである.
 では違った工夫をしようという発想が育種サイドにはあった.適期を変えてしまうという発想である.例えば,植付適期が夏植えだとして,初期生育が悪い品種は8月,早いものを10月にすれば植付け作業を分散できる.株出しにおいても「株出し適期」が変われば,そこに合わせた収穫を行うことが出来て,作業を分散できる.早期高糖だからといって12月に収穫しても株出しできるとは限らない.だから低温萌芽性が必要なのだ.のちにこの考え方は「秋植秋収穫」という名前がついていくのだが,現場の反発が大きかったといわれている.
 さて水平葉を持つので畝の上に葉が広がりやすいが受光態勢は悪くなりやすいはずだ.しかしなんだろう?稲妻型の茎の形がそうさせるのか影ができる位置が少しづつ違うように見えるのだ.加えて葉の形は両親に似ている.大きく弧を描き茎から遠くへ垂れ下がるので株元は明るくなる.だがやはり機械化に関しては葉が邪魔になるのではないだろうか.


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