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サトウキビ Ni14

農林14号 (母本:KF78-81 父本:自然交配 )

生い立ち

 1886年石垣で産まれ,1987年に鹿児島で播種された.1990年に系統名KY88T-520と命名された.1998年に品種登録されNi14と名付けられた.主に鹿児島で栽培されていた.
 やや糖度では劣るものの,かつての品種よりは高糖で,新植はNiF8よりは重い,株出しは茎数がそろえばNiF8と同等かそれ以上という理由で選抜されている.台風には強いが病気に弱く,肥沃な土壌を好むという性質上,沖縄では栽培されなかった.アントシアンが多いのか収穫期には他の品種ではあまり見かけない濃い紫色の茎になる.茎重型の中でも大柄なサトウキビで長いのに太く,1茎重が重くなる傾向にある.

時代背景

 昭和が終わり,平成が始まった頃.今の国際農林水産業研究センター(JIRCAS)が石垣島に沖縄支所を設立した.これまでも筑波に拠点を置き海外でサトウキビのさまざまな研究に携わっていた同組織は,日本でもサトウキビ育種の研究に携わるようになっていた.さとうきびの花はすべての品種が日本で開花できるわけではなく,実生を得るには限界があった.鹿児島か,沖縄か,海外か,という所へ石垣島という選択肢が出来て初の成果となる.なお,Ni14は品種化されたサトウキビの中で母本に日本が作出した系統が使われた最初の品種である.

草型と特徴

 未展開葉は直立し,葉の先端は上を向くかやや横に倒れ斜めになる.展開葉は直立するがやや開き,先端は下向きになる.葉幅が広く,葉身は長いのが特徴である.展開葉は未展開葉よりも高い位置へ持ち上げられるようにして横へ広がるので葉が多いのは最上位展開葉周辺の比較的高い位置になる.株の上には光が入りやすい構造になっているが,畝の上の光は上部で遮られる.



以下,参考にならない勝手な考察
 育種を行う場合,母本が生えている場所に父本となるサトウキビの花粉を持っていく必要がある.さとうきびは日本のどこでも花が咲くかというとそうではなかった.気温と日長が開花に及ぼす影響も研究しながらも,花が咲く品種だけが母本として使われていた.海外で花が咲くとわかっていても,日本の品種および系統を母本にしようと考えたらまず輸出して植えるところから始めなければならない.沖縄よりも花が咲きやすい石垣島という選択肢が出来て,初の成果となるまで13年かかっている.それでも最速といって過言ではないだろう.
 打倒NiF8,という姿勢は石垣島でも同じだったようだ.当時の研究資料を見ると仮置き原料の劣化速度,という物を調査している.手刈りは収穫に時間を要するため収穫したものが運搬・取引・圧搾されるまで数日かかるケースがある.これに品種間差が有るのか,という事を調べているのだがNi14はNiF8に劣るという結果が残されている.
 さて,LAIに関しては弱点の多いサトウキビである.個葉が大きい.分げつは少ない.そしてどちらかといえば脱葉性が良い部類.しかしながらこのような品種を好む農家がいるので使い方を少し考察してみる.1茎重が重い最大の理由はLAIが少ないので圃場内が明るいためNARが高くなる傾向にあることだ.NARを高く維持しようとしたら,葉の窒素を増やさなければならない.Ni14が肥沃な土壌を好むのはそのためであろう.昨今は肥料が高騰しているので土づくりが得意な玄人向けになってしまう.それでも多収性はNiF8よりも上なので「NAR型」のNi14を試すのもありかもしれない.


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