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サトウキビ Ni16

農林16号 (母本:RF78-209 父本:CP70-1133)

生い立ち

 1990年沖縄産まれ.1991年に種子島で播種され1994年にRK91-1004と名付けられた. 2002年にNi16と命名された.主に沖縄では久米島、鹿児島県では奄美大島で栽培された.特徴として台風に強く株出多収性であったとされる.太い茎が特徴でありながら分げつは比較的多かった.これまでの早期高糖重視とは少し変わって,糖収量重視,つまりあまり糖度は高くないが単収を高めて砂糖の生産量を増やすことを目指した.

時代背景

 サトウキビの栽培面積が減少しはじめ,農家の数も減少しはじめ,いわゆる先細りになり始めた時代である.農家が高単収・高糖性だけでなく株出し多収性に注目するようになっていた.しかしすべての地域で株出しが行われていたわけではなく,株出しが出来ない地域は不良環境とか低単収地域と呼ばれた.不良環境とは,低温,やせ地,病気,自然災害など様々な要因があった.このような地域でも安定生産が出来る品種もあったが,やはり多収ではなかったため,低単収地域の収量向上を目的として育種が行われた.

草型と特徴

 茎が直立せずやや斜めに伸長するので根元から傾いているように見える.未展開葉は直立しているが茎に対して直立するのでやはり傾いている.つまり畝の上の方向へ伸びて地面に水平になる.その時先端は横へ折れ曲がる傾向にあるため,結果的に上または下に垂直に伸びる.展開葉はやや水平方向に展開して緩やかな弧を描き先端は下を向く.葉の量が多い高さは最上位展開葉の下の方になる.しかも畝の上のほうが葉が多く受光態勢がとても良い.



以下,参考にならない勝手な考察
 糖度が高いが甘すぎないことも込みで個人的にはとても齧り易いさとうきびと認識している.皮が柔らかく,歯で皮を剥いて丸かじりするやり方を実演するのに使っていた.だから,というわけではないだろうが鼠害に遭いやすかった.
 葉が直立するという事は受光態勢が良いのであるがその反面,LAIの拡大にはたくさんの葉を要するため分げつを増やすか密植をするというのがセオリーである.この品種は分げつを傾かせることで畝の上に葉を広げるため比較的少ない分げつ茎でLAIを確保できる.それでいて分げつ茎通しの葉が重なりにくい利点を持つ.かなり特殊であるが,畝幅を広げて,機械植え,機械収穫を行う上での多収性理論の中では無視できない形質だと思う.畝の上に茎が伸びるのは好ましくないがNi16は倒伏しないさとうきびである.だから畝幅が広ければ機械化してもさほど問題にはならない.比較的明るい環境で葉面積にコストをかけずLAIが早く拡大するので安定生産という面では理想的な品種だ.
 個人的には安定生産も申し分ないし,機械化多収性も見込めると思うのだが,安定生産性が農家に認識される前に普及しようとしていた地域の製糖工場はなくなり,ビレットプランターが普及する前に品種は淘汰されてしまった.生まれてくる時代を間違えた品種である.


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