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コーヒーを飲めばカレー屋が儲かる。

友人に誘われ気になっていたコーヒー店(仮にSコーヒーとする)へ行く。
が、あえなく休店日であった。
仕方なく近くのチョコレート専門店へ行くも「なんか違う違うそうじゃない」という思いを抱えたまま帰路へ着く。次こそは必ず。

と、胸に誓って3日後。
我々は誘ってくれた友人の運転で車を走らせる。昨日までの大雪とは打って変わって、最高気温は10度以上あがり、春の香りが再び街を満たしている。ああ、何という門出、お出かけ日和。ああ!早くおいしいコーヒーが飲みたぁぁい!

出発して1時間半、開店時間と同時にSコーヒー店駐車場に滑り込み、先日は閉まっていたシャッターが空いていることを確認、意気揚々とドアを開ける。

「いらっしゃいませぇ~、本日コーヒー豆の販売のみで喫茶は行ってないのですがよろしいですか~?」

この人のよさそうな店主は笑顔で今何と言ったのか、はてさて恐ろしい言葉のように聞こえたが…。隣を見てみると誘ってくれた友人がワナワナと震えている。

友人は顔面蒼白のまま「あ…そうなんですが、じゃあ仕方ないですね…また来ます」と述べ店を出ると「なんでだよぉ…よぉょぉょぅぅぅ…」と叫んだ。平野に在ったそのコーヒー店の前で発せられた悲しき奇声は、この時期特有の強い風と同化して湖の水面を揺らしながら、遥か彼方へと消えていった。

しかし我々は大学生、時間はある。そして余裕もある。次の手は早急に打たれた。友人に勧められていた中華料理屋へと行くことにする。意気消沈して「ごめんね」しか言えなくなっていた友人を慰めながら、駅裏の路地を抜ける。あぁ、いかにも美味しそうな店がありそうな雰囲気じゃないか。そしてその店は唐突に目の前に現れた。「2月末まで臨時休業」の張り紙と共に。

余りのショックによって自我を忘れた友人は、今にもアクセル全開で国道を突っ走りそうな勢いである。「わが県の国道が高速道路になるのは深夜帯のみだ、やめたまえ」と言う私の声すら耳に入らない状況であるので、致し方なくすぐ近くにあった喫茶店へ入る。グーグルマップで検索をかけるとカレーが美味しそうだったのでそれを目当てに。


席に着きメニューを見るとコーヒーのページに但し書きが一つ。
「※当店の珈琲はSコーヒー店の豆を使用しています。」


友人は一言呟いた。「……疲れた」と。


※カレーもコーヒーもとっても美味しかったです。
※帰り、高速上でガソリンのランプがついて焦る、というトラブルもありましたがそれは割愛。
※同行していたもう一人の友人が意中の人とバッタリ会うという奇跡もありましたが割愛。




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