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「出版社で働きたいです!」を叶える(0)

「将来出版社で働きたいです!」

大学の就職先情報に登録しているので、
熱い学生さんから1年で数件お問い合わせを頂く。

転職した旨を伝えても、
「それでも話を聞いて欲しい」と言う方が多い。


お、後輩がわざわざ!
さすが私!


...何という訳ではない。
単純に「出版社」に就いたOBOGが少ないのだ。

一人一人お会いすることは出来ないが、
将来出版業界で働きたい!という方の為にも、
自己満足の為にも、出版社に入る前から後まで、順を追って綴っていくよ。

あと、長句なるからシリーズ化するよ。
(途中で投げ出しそうよ)

出版社は狭き門?


3大○○!、5大○○!のように、とかく業界用語で括られる大企業。
出版社も例外では無く『3大出版社』という括りが存在する。

        ①「講談社」②「集英社」③「小学館」

マンガ好きなら誰もが知っている
「マガジン(講談社)」「ジャンプ(集英社)」「サンデー(小学館)」
世に名だたる伝説を流布してきた三傑だ。


もちろん、上記3大出版社以外にも「KADOKAWA」「ダイヤモンド社」等、
いわゆる大手から中小規模の出版社まで、
日本全国で約3,000社が「出版」という戦場でバチバチやり合っているのだ。


そんな全国に3,000社近く存在する出版社だが、
就活生の間では「入社するのは狭き門」として知られている。


私も大学3回生(年生)の春に「働くなら出版社が良い!」と思い始めてから、
実際に内定を得るまで出版業界について多くを調べ、勉強したつもりだが、
正直、「狭き門」という表現は間違っていない。


出版社は少数精鋭?


出版業界で用いられる言葉の一つに
「出版業は“人"と“電話"があれば成り立つ」という言葉がある。
(今まで50代のおじ様3人が使っていた格言。信憑性はない。)

・印刷データの制作は「編集プロダクション」
・出版物の印刷作業は「印刷会社」
・全国の書店への流通は「取次会社」
※もちろん、会社により方針は様々。

出版物制作・販売は基本分業命!
社内外とのチームワークこそ全て。

究極、出版社は本作りの「まとめ役・舵取り役(人)」と
関係各所と連携を図る為の「連絡手段(電話)」さえあれば完結する。

「連絡手段(電話)」なんて今の時代安価で優れた機能のものが
沢山あるのだから、出版社にとって最重要資本は「人」ということになる。

では、先に述べた『3大出版社』は
それぞれどの程度「人」を抱えているのだろうか。


【①講談社】
従業員数:932人(2019年)
資本金:3億円
売上高:1204億円

【②集英社】
従業員数:757人(2019年)
資本金:1億80万円
売上高:1,164億9,700万円

【③小学館】
従業員数:694人(2020年)
資本金:1億4700万円
売上高:970億5,200万円

正直、元中小出版社に勤めていた私からすれば...



従業員めっちゃ多いやん!
(因みに前職の従業員数は60名くらい...大きめのサークルかな?)

という感想なのだが、皆さんはどうでしょう?

一つの業界のTOP3と考えると、正直少ないと感じるのでは?


あと、資本金の少なさよ。。

出版事業は数字だけ見れば参入し易そうだけどね。
(実際は他のしがらみがいっぱいある。取次とか取次とか...)


従業員数だけ見れば「とは言え7〜800人いることだし!ワンチャン!」
と思えた貴方、見込みがある!(謎の上から目線)

冗談抜きで“ポジティブなこと"は重要な才能だと思う。


しかし、「狭き門」と称される由来の真骨頂はここから....

3大出版社の新卒採用実績

①講談社
新卒採用実績:26名(2020年)

②集英社
新卒採用実績:20名(2020年)

③小学館
新卒採用実績:16人(2020年)



....いやいや、多ない!?


どうした出版業界、どうした大手出版社!
好景気か?好景気なのか?
(私が)辞めた後に好景気なのか!?

私が新卒入社を果たしたのは2014年頃。
その頃は3社共に10名前後の実績だったのだが、
感覚的に1.5倍から2倍は多く採用している。

コロナで次年度は分からないが、
これ今の学生さんチャンスですよ!


思わず「多ない!?」と素のリアクションをしてしまったが、
いわゆる他業界の「大手」とは比べるまでも無く少数採用。

「増えたとは言え、ごく限られた」の採用枠。
そこにとんでも無い数の応募が集まる点が「出版社=狭き門」の所以。


「私もあの作品に関わりたい!」

「“編集者"って響きがかっこいい!」

「クリエイティブな仕事がしたい!」

「マスコミ業界って夢がある!」


「出版社」、「マスコミ」という響きに華やかなイメージを持つ人も多い上に、
大手出版社ともなれば、日本人の大半が幼い頃から慣れ親しんできた
コンテンツの権利を有している。

知名度が抜群に高い。

故に『20人前後の採用枠に対して、約12,000件のエントリー』があるのだ。
(エントリー=採用応募書類の提出まで行った人)

単純に考えて、約600倍の倍率となる。


余談で自慢だが、私が入社した時は約3,600人のエントリーに対して
採用人数が4人だった。
倍率は約900倍だ!
(後にも先にも大手出版社社員に勝ったのはこれだけ。悲しい。)

「雑誌」「小説」「マンガ」「アニメ」etc...

出版社という“著作権"を有する企業故、斜陽産業と囁かれる今となっても
大手出版社の人気は凄まじいのだ。


本屋が消え、出版社も消える。


若者の活字離れ。
娯楽の多様化。
(noteを10代から活用する流れができれば、あるいは...)


「全国で書店が潰れている」というニュースを見たことがある人も多いだろう。

実際、毎年300店舗ずつ廃業に追い込まれている流れは5年ほど前から続いており

2019年は遂に全国の書店が10,000店を割ったというニュースがあった。

その流れを受け、2014年には全国で4,000社程度あった出版社
2019年には3,000社程度まで減少している。


大手やヒットコンテンツを保有する出版社が増収を叩き出す反面、
少なくない中小出版社は廃業の危機と隣り合わせの状態だ。

となると当然、求人なんて出せない。

新卒なんて取って、育てる余力は無いのだ。

『出版社の95%は継続した採用活動を行っていない』

決して暴論では無いはず。

残念ながら私の前職も私の代から4年間、正社員採用は
新卒・中途問わず無かった。

そんな一見華やかだが、内情は厳しい出版業界。

需要(応募)と供給(採用)の開きが大きい業界であることから、
中小規模の出版社への就職とは言え、容易では無い。


さて、何となく「厳しそう...」的なことを書き綴ったが、
とは言え「受かる人は受かる」

「自分なら、いけるでしょ!」

そんな謎ポジティブを持つ将来有望な方にエールを送るべく、
私がどんな人間で、どんな採用活動を行ってきたのか
反省も交えながら書き続けていきたい。

<つづく>


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