2024/8月第三週のゾンビ論文 月餅を食べてゾンビ・アポカリプスを乗り越えよう

本物のゾンビについて書かれた論文を探すべく、Googleスカラーのアラート機能を使い、ゾンビについて書かれた論文を収集している。

アラートの検索条件は次の通り。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」

  2. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」(取りこぼし確認用)

「zombie」をキーワードにゾンビ論文を探しているのだが、比喩としてゾンビを使う論文も多いため、「-◯◯」で比喩としてのゾンビを扱う論文を排除している。排除したいゾンビや論文は、以下の通り。

検索条件1には一般性の高い排除キーワードが含まれているため、それらが不必要にゾンビ論文を排除していないかを条件2で確かめる。

今回、8/19~8/25の期間で収集し、以下の通りの論文を得た。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」六件

  2. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」一件(条件1との重複を含めれば七件)

検索条件1は評論が二件、書評、民俗学、政治学、エッセイが一件ずつだった。


検索条件1「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」

ゾンビ論文は引っかからなかった。

ゾンビの有無で高慢と偏見はどちらを好みますか?

一件目。

アラート日付:8月20日
原題:How Do You Prefer Your Pride and Prejudice: With or Without Zombies?
掲載:Retelling Jane Austen: Essays on Recent Adaptations and Derivative Works
著者:Steven Knapp
ジャンル:評論

ゾンビで高慢と偏見とくれば、ご存じ『高慢と偏見とゾンビ』である。そしてこの論文は『高慢と偏見』の作者ジェーン・オースティンの作品を研究する。

したがって、ジャンルは評論。


部族の呼び声

二件目。

アラート日付:8月20日
原題:The Call of the Tribe
掲載:The Independent Review
著者:Edward J. López
ジャンル:書評

Mario Vargas Llosa著『The Call of the Tribe』の書評。この書評によれば、彼の作品は政治権力とアイデンティティ、芸術と社会、自由と繁栄といったテーマを探求しているのだそう。

zombieの単語は以下の分に出てくる。

Similar to economists who understand that social welfare is rooted in individual choice, Vargas Llosa extols the good of the whole and reviles the exploitation of the individual. He forms a theory of societal harm that is centered on a social dynamic whereby, when presented with the right opportunities, charismatic leaders can tap into a form of public anti-reason, one that promotes the centralization of power and nurtures the collective while erasing individuality, herding the masses like zombies to accept reforms that ultimately oppress and impoverish them. In this way, the “disappearance of the individual into the collective” (p. 66) forms the elemental stuff of authoritarianism and inspires the book’s evocative title.
(社会福祉が個人の選択に根ざしていることを理解している経済学者と同様に、バルガス・リョサは全体の利益を称賛し、個人の搾取を非難している。彼は、社会力学を中心とした社会的危害の理論を形成しています。それにれば、適切な機会が与えられれば、カリスマ的なリーダーが一種の公共の反理性、権力の集中を促進し、個性を消し去りながら集団を育むような反理性を作り上げる。言い換えれば、大衆を追い込みゾンビのような群れにして、最終的に彼らを抑圧し貧困にする改革を受け入れさせる。このように、「集団への個人の消失」(66 ページ)が権威主義の基本的な要素を形成し、本の刺激的なタイトルの由来となっている。)

同論文より

ここでいうゾンビとはもちろん比喩であるが、ブードゥー教のゾンビのように他者に支配される被支配者としての比喩である。ゾンビ論文を探していればよく見かける比喩だ。本文中の扱いもよく見る。したがって、特に得られるものはなさそうだ。この論文の内容には立ち入らないこととする。

ジャンルは書評。


モンゴル、明、そして月餅騒動の神話

三件目。

アラート日付:8月20日
原題:Mongols, the Ming, and the Myth of the Mooncake Rebellion
掲載:RAD II
著者:Jeremiah Jenne
ジャンル:民俗学

月餅の歴史を語る。どこまでが本当のことか知らないが、チンギス・ハーンが中国大陸を支配していたころ、中国人たちはモンゴル支配に立ち向かうべく月餅にメッセージを組み込んで連絡を取り合っていたそうだ。一応調べたらWikipediaにも月餅伝説が書いてあった。割と有名な話なのだろうか。

zombieの単語は、なんと月餅は日持ちがするからゾンビによるアポカリプスが生じても大丈夫!という文脈で出てくる。調べてみたところ常温21~28日持つらしい。高々ひと月でゾンビを駆逐して平和な世界を取り戻すことができるのだろうか…。発想は面白いが。

ジャンルは民俗学。


1981年の副党首選挙

四件目。

アラート日付:8月20日
原題:The 1981 deputy leadership contest
掲載:Fightback!
著者:Dianne Hayter
ジャンル:政治学

イギリスの労働党副党首選挙に関する論文。なぜかWikipediaにも記事があった。イギリスにとっては重要な事件だったのだろうか。

zombieの単語は次の文で出てくる。被支配者としてのゾンビ比喩である。

Healey was more blunt in his rebuttal of these pressures, claiming that forcing MPs to be programmed to follow the wishes of CLPs–ignoring both voters and their own consciences–would turn MPs into zombies.
(ヒーリー氏はこうした圧力に対する反論でより率直で、有権者と議員自身の良心の両方を無視して、議員を CLP の意向に従うようにプログラムすることは、議員をゾンビに変えてしまうと主張した。)

同論文より
(引用部はGoogleアラートメールより)

ヒーリー氏が本当にそう言ったのか、ちょっと調べただけでは出てこなかった。ジャンルは政治学。


愛の最後:『The Last of Us』における幸福 、友情、そして愛

五件目。

アラート日付:8月22日
原題:The Last of Love: Eudaimonia , Friendship, and Love in The Last of Us
掲載:The Last of Us and Philosophy : Look for the Light
著者:Darci Doll
ジャンル:評論(哲学的批評)

真菌に寄生された人間がゾンビになるゲーム/TVドラマである『The Last of Us』の評論。アリストテレスの言葉を引きながらの批評。おおむね、人間同士仲良くしようねと言った内容を結論している。そのくらいゾンビ映画をたくさん観ていればすぐにわかるではないか。

ジャンルは評論。細かくジャンル分けするならば、哲学的批評といったところか。


ポール・モノー氏とウィリアム・G・プーリー氏の論文に対するコメント

六件目。

アラート日付:8月25日
原題:Comment on the Papers by Paul Monod and William G. Pooley
掲載:Indiana Universityのリポジトリ?
著者:REBECCA L. SPANG
ジャンル:エッセイ?

所属大学の問題を告発する論文だろうか。論文にしては詩的な文言が多く、内容をつかみづらい。ということで、ジャンルはエッセイにした。


検索条件2「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」

上記の条件でねらいのゾンビ論文を誤って排除していないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビドラッグ、ゾンビ試薬、ゾンビPC、哲学的ゾンビおよび評論系の論文は排除されるように設定してある。

ほろ苦い

アラート日付:8月24日
原題:Bittersweet
掲載:Note and Records: The Royal Society Jounal of the History of Science
著者:Anna Marie Roos
ジャンル:人文学

「-philosophical」および「-gender」で排除。研究者は研究対象との距離を縮めようとするが、人間を対象とした場合であっても距離は中々縮まらないという。それを「人間は類人猿からゾンビまであらゆるものとの関係で人間を定義し」たと表現している。



最後に

検索条件1は評論が二件、書評、民俗学、政治学、エッセイが一件ずつだった。

特に得るものはなかった。ただ、月餅がゾンビ・アポカリプスに有効というのは面白かった。缶詰の方がもっと有効であるように思うけれども。コロナだってひと月では収まらなかったし。

もうひとつ付言しておくと、検索条件1の方が2よりも多かったのは珍しい。しかも評論二件に、書評、エッセイが一件ずつと排除したい論文が合計四件もあった。これらもうまいこと排除するようにキーワードを設定したいものだ。

今回はねらいの論文がなかった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?