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お客様、いつものですね、、目の前に置かれたのは『黒ビール』

Tomo's Barへようこそ

席に着き、目を合わせた店員さんは

いつしか
私がオーダーする前に

『お客様、いつものですね』と

黒ビールを出してくれるようになっていた

そう、
私はいつの間にか
『黒ビールの人』になっていた


ある職場でのこと

お酒を飲む女性が
少なかったせいか

私がお酒を飲むことを知ると

後輩から、
『今度、一緒に飲みにいきたいです』
とのお誘いがあり

職場から駅の間、
坂を登ったあたりに
あった
ビアバーで飲むことに

彼女は
東北出身という事もあり
お酒が強く
楽しそうに
明るく飲んでいた

職場で、
とても真面目な彼女とは
違う面に触れ
楽しそうに飲む人だな
と、

それから
彼女からお誘いがあると
そのお店に
行くことになった

何度か飲んでいるうちに

途中で
気づいたことが
あった

彼女は
職場で辛い事があった日に
必ず私に
『今日、飲みにいきませんか』
と伝えてきていた

彼女は
その辛い事について

一緒に飲んでいて
一度も私に
話してはこなかった

私はただ、
2人でお酒を飲んで

彼女がはしゃいでいる
姿を見て
その時間を楽しんだ

その可愛い後輩は
ある日、
突然、私の前から
姿を消してしまった

先週も
一緒に飲んでいたのに
いつもと変わらない様子で
はしゃいでいた

もっと、
彼女に色々
聞いた方が良かったのか、、

何も言わずに
退職してしまった


暫くして
久しぶりに
同じお店に
友人と入ると

店員さんは
『お客様、いつものですね』と

あの日と変わらない
黒ビールが目の前に置かれ

私はほろ苦いビールに口をつけた

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