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I shut my eyes in order to see.

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  • ウイスキーを女性に喩えるシリーズ

    今夜もモテたなぁ。

最近の記事

時間旅行へようこそ

重力によって、わたしたちは地球の上に立っています。 上から下へと落ちてゆく力。あるいは引っぱる力。 あらゆる物体は、高いところから低いところに移動します。 奇遇なことに、エネルギーにも同じような性質が適応されますね。 そして、時間という概念に囚われたわたしたちは、過去から未来に向かって落ちているようです。 まるで、墜落する飛行機のように。 わたしたちが認識するこの世界において、あらゆる有機物、あるいは無機物がこの力の影響を受けています。 過去から未来へと一方行に進む力

    • ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #18(山崎18年)

      『黒が極まると、煌るくなる。』 彼女は、時間の流れを超越した存在のようだった。 プラチナ・プリントの中で、彼女の瞳は漆黒の闇を通り越し、底無しの光を放つ。 美しい裸体の曲線は、彼女が咥える煙草の煙とフラクタル構造をしており、時間、空間、自然法則さえも彼女の美を際立たせる後ろ盾となっている。 それは、好奇心が導くアングル、予期せぬ光の陰翳、そして制御不能な自然の悪戯が生んだ、緻密なディテールの集合体である。 彼女の存在は、写真の中でさえ有機的なエネルギーを解き放ち、そ

      • 風の時代とモンテーニュ

        昨今、「風の時代」という言葉をよく耳にするようになった。 もともとは西洋占星術をルーツとする言葉なのだけれど、今回はそういったスピリチュアル要素をいったん度外視して、私個人が感じている「土の時代(地の時代)」と「風の時代」を、7つのテーマごとに比較をしてみたいとおもう。 そして、この「風の時代」という概念をとらえるにあたり、16世紀フランスの哲学者・モンテーニュという人物の残した『エセー』という著書が非常に興味深く、かつ「風の時代」に関連性のある言葉を数多く残している。

        • ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #17(タリスカー 10年)

          『ニッチなのにメジャーという不思議』 この子の魅力に気づいているのは僕しかいないとおもっていた。 そのことを仲間内で打ち明けると、友人Aも、友人Bも驚いていた。 彼らもその子を魅力的に感じていて、同じように自分だけがそれに気づいているとおもっていたらしい。 それもおもしろいことに、その魅力というのがいわゆる「王道」なものではなくて、むしろ「えっ、そんなところに?」というくらいニッチなのだ。 修学旅行の夜にみんなで集まって、気になっている異性を言い合った経験はあるだろ

        時間旅行へようこそ

        • ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #18(山崎18年)

        • 風の時代とモンテーニュ

        • ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #17(タリスカー 10年)

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        • ウイスキーを女性に喩えるシリーズ
          18本

        記事

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #16(グレンファークラス 25年)

          『それは、形がわからないほどにやわらかい。』 物を掴もうとするとき、境界となる固さがあるからこそ、それを掴むことができる。 すなわち物理的な形とは、「固さ」によって知覚できるといってもよい。 では、究極にやわらかいものがあったなら、それを掴むことができるだろうか。 おそらく、掴むという感覚を失ってしまうだろう。 まるで水を掴もうとするように、触れていること自体はわかるのに、どうしても掴むことができないという不思議な感覚だ。 彼女に触れるときも、そういう感覚に陥る。

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #16(グレンファークラス 25年)

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #15(カヴァラン)

          『まるでゴーギャンの絵のよう』 フランスの画家、ポール・ゴーギャンが描いたタヒチの女性の絵を見たことがあるだろうか。 種類は多数あるが、全体としては青や緑をベースとした暗めの色調の中に、花や果物の鮮やかな色が入り込んで、なんとも不思議な雰囲気を醸し出している。 女性たちの表情は決して明るくはないものの、原住民女性の穏やかな性格や美しさを見事に表現している。 「名状しがたい彼女たちの素朴さ」 「恥じらいなく裸で動き回ることができる」 タヒチの女性を数多く描いたゴーギャ

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #15(カヴァラン)

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #14(ポートエレン)

          『その羽根は、折れてもなお飛び立つ』 バレエにおいてもっとも重要なのが、バランス感覚である。 彼女の優れたバランス感覚は観客を魅了するだけの演技力を裏付けており、彼女の長い手足はバレエに向いた体躯をしている。 彼女は、天性のバレリーナであった。 若い頃の彼女は、まさにスワンのようだった。 しなやかで洗練された動きは、息を呑む美しさがある。 彼女をとり巻く老若男女の熱狂的なファンは、こぞって花束をプレゼントした。 いっぱいの花束を抱え、笑顔でファンに挨拶する様子は

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #14(ポートエレン)

          感動するウイスキーの呑み方『アイス・パラリシス』の手順

          『ストレート』 『オンザロック』 『トワイスアップ』 『ハイボール』 『水割り』 etc. ウイスキーには、さまざまな呑み方がある。 さて、今回ご紹介するのが、 『アイス・パラリシス』という呑み方。 おそらく、これを聞いたことがあるひとはいないはずだ。 なぜなら、私が命名した呑み方だからである。 この呑み方を、ウイスキーを楽しむすべてのひとに体感していただきたく、大袈裟にも固有名詞をつけてみた。 だれでも簡単にできる呑み方なので、 ぜひともお試しいただきたい。

          感動するウイスキーの呑み方『アイス・パラリシス』の手順

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #13(キルホーマン)

          『美しく蒼き風』 ある夫婦が、新天地に引っ越してきた。 その場所というのは上品かつ独特な雰囲気の漂う一帯であり、気高く、伝統ある屋敷が身を連ねているため、新参者にとってはたいそう居心地がわるく、肩身の狭い思いをするのが大概というところ。 しかし、その夫婦は違った。 若い夫婦であったが、その二人の品行方正は他を真正面から認めさせるだけの輝きがあり、かつ、妬みを買うような嫌味もない。 事業家である夫は外交に長け、周囲を引き込む能力がある。 もちろん資産も潤沢である。

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #13(キルホーマン)

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #12(コンパスボックス スパイスツリー)

          『隠されざる匂い』 私は、女子校でテニス部の顧問をしている男性教師である。 いわゆる「硬派」な性格で、すこし不器用なところがあるのは自覚しているが、教師をするにあたってそれはむしろポジティブなものだとおもっている。 誠実に、厳しく。 指導において、私情は禁物である。 当然、テニス部の顧問をするにあたっても、厳しく指導していた。 そんな教師人生がもう10年近くなって、ある年。 「ハーフの子」が入学してきた。 国まではわからないが、どうやらラテン系の血が入っている

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #12(コンパスボックス スパイスツリー)

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #11(ラフロイグ 10年)

          『アーティストたる人格』 彼女を一言で表すとすれば、「我が道を行く」タイプだ。 個性というのは、強ければ強いほど好き嫌いが分かれるものである。 そして、彼女の印象も賛否両論。 苦手なひとからすれば、近寄ることさえも毛嫌いされる。 しかし、彼女には中毒性のある強烈な魅力がある。 たとえ反感をもつひとがいたとしても、彼女を取り巻く大勢のファン(一種の信者ともいえよう)たちが鉄壁の防御力をもって、それらの喧騒をかるく跳ね返してしまうだろう。 一線を超えたアーティストと

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #11(ラフロイグ 10年)

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #10(ブルイックラディ)

          『女性は外見ではわからないものだ。』 服装は、ときに個性をまぎらわせてしまう。 派手なファッションの人の性格は派手かというと案外そうでもなかったり、大人しくみえる人が実は大胆だったり、外見というのはなかなか厄介なものである。 彼女の場合もそうだ。 モダンに洗練された外見は、かえって本人の内面をわかりづらくしている。 それは一種のカモフラージュの役目を果たすので、ギャップという高度な戦略をとっているとも取れるが、男どものリテラシーや想像力が足りなければ、それも逆効果に

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #10(ブルイックラディ)

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #9(ムーングロウ)

          『僕は海を見るように、君を見ていた。』 君と、夜の浜辺を歩いていた。 真っ白なワンピースを着た君は、月に呼応して光を放っているようだった。 裸足の跡が、時間軸にそって海の砂に溶けていく。 なぜか僕の足跡よりも、君の足跡のほうが早く消えてしまう。 「今夜は半月だね」 「うん。すこし欠けたきれいな半月ね」 水面にやわらかな月が揺らめいている。 空の月と海の月を合わせても、中央にすこしだけ空洞ができるだろう。 僕たちふたりが合わさったなら、完全な満月になるだろうか

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #9(ムーングロウ)

          休符も音楽。行間も文學。

          跳びながら一歩ずつ歩く。 火でありながら灰を生まない。 時間を失うことで時間を見出す。 死して生き、花にして種子。 酔わせつつ醒めさせる。 傑作と資格。 この一瓶。 ====== サントリーオールド(1979) feat. Takeshi Kaiko

          休符も音楽。行間も文學。

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #8(ロイヤルロッホナガー)

          『人間は賢くなったかわりに、もっと大切ななにかを失った。』 僕には彼女がいない。 だけど、僕は不倫をしている。 相手は僕より10歳うえで、 小学生の息子が2人いる。 旦那もいる。 そしてもちろん、 僕たちがそういう関係にあることは、 彼らは知らない。 これは、夜に咲く月に秘密を誓った、 ふたりだけの美しい体験記である。 僕たちは、はじめからこのような関係だったわけではない。 子育てだとか、親同士の馴れ合いだとか、 彼女はそういうのがどうも苦手らしく、 僕はその

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #8(ロイヤルロッホナガー)

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #7(ザ・マッカラン 12年)

          『ザ・高嶺の花』 彼女は、家柄がよく、 教育熱心な家庭ではあったけれど、 あたたかく、恵まれた環境で育った。 自らすすんで人前に立ちたがるようなタイプではなかったけれど、人柄の良さと優秀な成績が相まって、中学では生徒会長を任せられていた。 文武両道とはまさに彼女を形容するための言葉で、弓道の全国大会では賞を取るほどである。 合唱コンクールでは、 ピアノの伴奏者をしていた。 とりまきの男たちからすれば、 まさに高嶺の花。 ここまで完璧に何事もこなされると、 もはや自

          ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #7(ザ・マッカラン 12年)