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Vol.14『遮光』中村文則

こんにちはサバです!
今回は中村文則作の『遮光』を紹介したいと思います!
では、行きましょう!

 この作品は主人公の「私」恋人(美紀)を事故によって失ったことによる喪失感ややり場のない怒りに葛藤、抵抗していく物語です。
「私」は幼いころに両親を失った経験から発作的に何かの振りをしたり嘘をついてしまう虚言癖である。なので、恋人を失ったことも周りにひた隠しにして嘘をつき続けてしまう。

 「私」は初めは単に嘘をつくことで悲しみに抵抗していたが、次第に自身が美紀を愛していて、強く求めていたことへの自覚が強くなり、悲しみに対して虚言で対抗できなくなってしまう。
そして、自身の虚言による振る舞いは自覚しつつも、次第に狂っていってしまう。

 物語が進むにつれて「私」が狂っていく様子が周りからの視線や緊迫したシーンの描写によってとてもリアルに感じることのできる作品でした。
 以前、中村文則作の『逃亡者』を読んだのですが、とにかく主人公の何かに迫られている描写のリアリティが凄くて、読んでる自分まで緊張してしまいました。このリアルさが「私」がいかにどうしようもなく追い詰められているのかを読者に感じさせ、この作品を面白くしていると思いました。

 では、次回の読書記録Vol.15で会いましょう!

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