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映画感想文「大名倒産」神木隆之介はじめ芸達者達揃い、安心してたゆたえる映画

残念ながら、映画館向きじゃない。

巨大スクリーンで観るには、こじんまりと平和過ぎて、なんだか、甲斐がない。

だけど、考えてみて欲しい。

ゆっくりと寛ぐ夜にAmazonプライムやNetflixで観たりするのは、こういう作品だ。

悪人はみんな最後に成敗される、いわゆる勧善懲悪の水戸黄門パターン。誰も死なないし、不当に傷付くこともない。コメディタッチの軽快な展開で、ちょっぴり教訓も含む、そんな安全圏の映画だ。

原作は浅田次郎。江戸時代の越後。間垣小四郎(神木隆之介)は鮭役人の息子としてのんびりと平穏に暮らしていた。

しかしある日突然お迎えが来る。実は小四郎は徳川家の血をひく丹生山藩の藩主の跡取りであり、病弱な兄達の代わりに藩主となって欲しいと。

連れられてみれば藩は100億円もの借金を抱え、倒産寸前であった。さあ、どうする?小四郎。

幼なじみを演じる杉咲花が、相変わらず芝居達者で良い(余談だが、彼女の最高傑作「湯を沸かすほどの熱い愛」は必見。主演の宮沢りえも素晴らしい)。

そしてノーマークだったが病弱な兄を演じる桜田通の朗々とした声の演技に魅了される。こんな使い方があったとは、なるほどという感じ。

何より主演の神木隆之介の太陽のような明るさが凄い。天真爛漫でまっすぐな小四郎が、危なげながら不器用に周囲の信頼を勝ち取っていく様が、さもありなんとリアル。

さすが大河ドラマの主役だと改めて感心させられる。この明るさは唯一無二だ。

脇を固めるのは佐藤浩市、小日向文世、キムラ緑子、宮崎あおい等、ベテランで磐石の布陣。

安心して、たゆたえる。

のんびりとしたい夜におすすめ。

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