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映画感想文「正欲」分かりあえるなんて幻想だ。それでも分かりおうとする気持ちが尊いのだ

エンドロールが終わり立ち上がった時、目眩を感じ思わず椅子の背を掴んだ。

簡単に感想を述べられない、ガツンと頭を殴られる作品。

賞も取ってる朝井リョウの小説。この世界に馴染めない人々の群像劇である。

広島の田舎町に両親と住み、ショッピングモールで働く夏月(新垣結衣)、夏月の中学の同級生で横浜で働く佳道(磯村勇斗)。ダンスサークルで花形のイケメン大学生大也(佐藤寛太)。いつもオドオドしてる同級生の八重子(東野絢香)

みんな人には話せない癖があり、生きづらさを抱えてる。

対比で登場する検事の寺井(稲垣吾郎)。普通の人である、しかし、彼も子供の不登校に悩み、問題を抱えている。

ダイバーシティなんて簡単な言葉だ片付けられないほど、それぞれの事情がある。なにが普通で誰が正解かなんてわからない。そしてわかったつもりになってる人ほどわかっちゃいない。

そもそも人と人が、わかりあうなんてあり得ない。いや、わかりあう瞬間はある。でも全てをわかってもらえるなんてない。

普段から実はそう思ってる。だから、登場人物たち辛さが、そこまで辛いことなのか、が今ひとつ理解できなかった。

ただ、大切な人を理解しようとする気持ちは尊い。

分かり合えない。それでも理解しようとするのが人間だ。

最後まで緊張感高い映画。ラストが秀逸。

新垣結衣、磯村勇斗、稲垣吾郎、佐藤寛太、いずれも熱演しており素晴らしい演技。

しかし群を抜いて東野絢香の背中で語る演技が素晴らしかった。次の作品をみたくなる、女優さんだ。

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