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映画感想文「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」ディカプリオのダメ男ぶり秀逸。人間の業の深さにため息

魅力的なダメ男を演じさせたら天下一品のディカプリオが堪能できる映画。

20代の美少年の輝きが拝める「タイタニック」(1997年)以降、まるでその美貌から逃れるように、二枚目じゃない汚れ役にチャレンジし続けるディカプリオ。

なんだかそこに持てる者の苦悩が垣間見える気がして、密かに応援してる。

いやあ、正直一般人にはやっかみしかないけどね
、突出した優れた外見を持つって、それだけみたいな感じで、その資産を否定したくなるんだろうなと勝手に推測。

そのあたりは秋の新作ドラマ「いちばん好きな花」の登場人物、外見だけが自分の価値だと思われてると凹む美人の夜々ちゃん(今田美桜)みたいな感じなんじゃないかと思う。

ってことで、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(2002年)、「華麗なるギャツビー」(2013年)、「ドント・ルック・アップ」(2021年)、このあたりのダメ男ぶりシリーズに続く本作。

アカデミー賞ものの、ディカプリオのダメぶりが本当に素晴らしい。いやあ、こういうどうしようもない人、いるいる。そして、困ったことにとても魅力的だったりする。

206分の長尺に耐えられるか身構えたが、あっという間であった。長さを感じさせない、脚本も演出も大変素晴らしい。

さすがの人間の業を描くのが得意なベテラン、マーティン・スコセッシ監督。

1920年代の米国。白人により、西へ西へと追いやられていった先住民のインディアン達。たどり着いた荒野のオクラホマ州で思いがけず石油が発掘され、莫大な富を手にする。

それを狙ってやってくる白人のならずもの達。そして白人と結婚した先住民が次々と衰弱死、自殺、事故で亡くなっていく。

米国の恥部である事実を元に描かれたストーリー。

戦争から戻り叔父のビル(ロバート・デ・ニーロ)を頼り西部にやってきたアーネスト(レオナルド・ディカプリオ)は、人当たり良く見てくれも良いが、酒と女が大好きな怠け者だ。

運転手として働くなかで客のモリー(リリー・グラッドストーン)が気になっていたところに、叔父に彼女との結婚を勧められる。

切れ者の叔父に操られ、彼女と結婚し、いつのまにか次々に悪事に手を染めていくアーネスト。

主体性なく主義主張もなく、ただ毎日を心地よく過ごしたいだけ。長いものに巻かれてやり過ごす快楽主義の彼は、良心の呵責に蓋をし叔父の命令に従い続ける。

妻を愛しながらも悪事に手を染めるアーネスト。夫に一抹の疑いを持ちながらも不安の中で彼と暮らし愛し続けるモリー。

そう、わかる気がする。人間とはさもありなん、合理で割り切れず、複雑な生き物なのだ。

ラストの夫婦のやり取りには思わずため息が漏れた。

胸を締め付けられる傑作であった。

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