映画感想文「告白、あるいは完璧な弁護」最後までハラハラドキドキ、見応えありのミステリー
最後まで気が抜けない、レベルの高いミステリー。
スペイン映画のリメイクとのことだが、なんというか韓国映画らしい濃さがあり見応えあった。
思い起こしたのは昭和のミステリー、松本清張作品。
映画だと、広末涼子主演の「ゼロの焦点」、田中裕子主演の「天城越え」。テレビドラマでは武井咲の「黒革の手帖」などが彼の原作だ。
作品の特徴である昭和の貧しさは今どきではないし、本作でもそこは踏襲してないが、犯罪をテーマにしながら人間を描く、という点が類似している。
ミステリーの体で、どろどろした醜く情けない人間というものの姿を描き、どうしようもない恐ろしさと哀しさを胸に残す。
そう、終わった後に「あー。人間てなんて愚かで、なんて業の深い生き物なのか」と。思わず深いため息が漏れるような作品なのだ。
そんな昭和の濃さ、大仰さ、みたいなものが私が韓国映画に感じてる印象であり、本作もその期待を裏切らない。
ただし、粗筋はありがちで凡庸だ。
今をときめくITセキュリティ企業の社長(ソ・ジソブ)が、不倫相手(ナナ、韓国のアイドル歌手)を密室で殺害した罪に問われる。
その弁護をすることになった辣腕弁護士(キム・ユンジン、米国の大ヒットTVドラマ『ロスト』にも出演の国際派韓国女優)と社長が事件について真実をぶつけ合う会話劇が映画の大半を占める。
通常会話劇は疲れるものだが、この作品の場合は心配いらない。
事件の真実が何かを議論しているため、その回想シーンは実際の登場人物が演じており、劇中劇のような有様で全く飽きさせない。
本当はこうだったのではないかと問いただす弁護士と、それに答える容疑者の心理戦は緊迫ムードで目が離せない。
個人的にはメインの登場人物3人の中では比較的感情抑えめの女性弁護士役のキム・ユンジンの演技に引き込まれた。これくらい静かに淡々と見せられる方が伝わるんだよね。と令和に生きる日本人としては思う。
見応えありおすすめ。