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映画感想文「最初の晩餐」食卓を囲むことは共に生きること。ある家族の食卓の記憶

「親父が死んだ……。65歳になる直前の、夏至の日の明け方だった」

こんな独白から始まる、それぞれ連れ子を持ち再婚した家族の共に過ごした5年間の食卓の記録。

根菜のたっぷり入った味噌汁や縁がカリカリに焼けた目玉焼き。みんなで包むシーチキン入りの餃子。家族の思い出と共に出てくる料理の数々に胸を突かれる。


都会から田舎へと、ひとり息子を連れ嫁いできた母。夢を諦め家族を守ることに全力を傾けた父。父に反発しながらも気付けば背中を追いかけている息子たち。行間に滲み出る、登場人物たちの不器用で懸命な生き方が心に沁みる。

染谷将太、戸田恵梨香、窪塚洋介、斉藤由貴、永瀬正敏。無名に近い監督の作品に集まった豪華な俳優達の演技はいずれも喝采の素晴らしさ。

また、子供時代の長女を演じる森七菜が、18歳ながら、ランドセルを背負う小学生女子の新しい家族に馴染めない「もやもや」を好演。

幸せなときも。悲しいときも。どんな時も。誰かと食卓を囲むことは、共に生きることだ。過ぎ去りし日の日常の尊さに思いを馳せ、落涙止まらぬ名作

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