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映画感想文「ハピネス」ファッションとは武装である。存在自体を感謝したくなる窪塚愛流を愛でる作品

存在自体を感謝したくなる美しさ。

窪塚洋介の息子、窪塚愛流、20歳。両親譲りのスタイルの良さや顔立ちの美しさはもちろんのこと、この年代にしか出せない少年と青年の狭間の危うさが印象に残る。

そして、役柄のせいもあってか、全身から滲み出る、伸び伸び育った好青年(好少年)感が凄い。窪塚洋介が素晴らしい父親であったのだと悟る。

物語は「下妻物語」で有名な作家嶽本野ばら原作の小説の映画化。雪夫(窪塚愛流)と由茉(蒔田彩花珠)は付き合い始めて間もない高校の同級生。恋するふたりの世界は完璧な幸せに満ちていた。

しかしある日、彼女は彼に自分が余命1週間であることを告げる。覚悟を決めて残りの日々を彼と過ごしたいと願う由茉。その事実を受け入れられず、動揺し逃げ出しそうになりながらも彼女の「死ぬまでにしたいことリスト」に付き合う雪夫。波瀾万丈のふたりの1週間が始まる。

レースでいっぱいのフリフリのドレス。頭の上にはリボンをつけたボンネット。そんなロリータファッションに身を包む彼女。その出たちは奇異に映る。でもそれを優しく受け入れる彼。実は雪夫の姉の月子(橋本愛)もロリータファッション好きであったのだ。

この姉と雪夫の関係が良い。異性の兄弟ということもあってかベタベタはしない。それでも適度な距離感でお互いを思いやる気持ちに溢れ心和む。そして、橋本愛、出番少ないながらも存在感あり。由茉のロリータファッションの理由も姉の存在から浮き彫りになる。重要な役柄であった。

また由茉の両親を演じる吉田羊と山崎まさよし。何しろ吉田羊の演技が登場する演者の中でも抜群に上手い。背中で語る演技、ちょっとしたセリフの説得力の高さに、改めて女優としての力量の高さを感じた。またシンガーソングライターの山崎まさよしも独特の存在感で味があった。組み合わせが絶妙。キャスティング素晴らしい。

個人的には全く理解できないロリータファッション。それは武装である。「下妻物語」の深田恭子を見た時にも感じた思いを改めて思い起こす。独特のファッションに身を包み、幸せで大切にされるお嬢様だと自ら演じることで人は強くなれる。そんなことを改めて思った。ファッションって深いなー。

ツッコミどころはあれど、なかなかよき作品であった。

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