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鉄骨バニー

シナリオスクールに行っていたときの課題作品です

タイトルだけは褒めて戴きました(笑)

  登場人物

真中正(24)金融系ITエンジニア
滝田雅(31)クラブ歌手
東野清(82)クラブオーナー
月影蓉狐(48)占い師
社員1
社員2

〇ナイトクラブモンシェール店内(夜)

 店内にはグランドピアノ。ビロード張りの品の良いソファー。真中正(24)が女性の肩を抱いてふんぞり返っている。場内から拍手。

真中「おぅ、なんだなんだ。いーぞー!」

 奥から真っ黒なスパンコールの衣装を身に着けた滝田雅(31)が現れピアノの横に立つ。滝田にスポットライト。

真中「はぁう!」

 バキューンという銃声。真中立ち上がる。滝田、ちあきなおみの喝采を悠々と歌い上げる。真中泣いて立ち尽くしている。

〇ナイトクラブモンシェール裏口(夜)

 裏路地、殺風景なグレーの扉。真中がジッと扉を見つめている。扉が開く。真中近すぎて開いた扉で顔を打つ。

真中「ぎゃ!」

 扉の中から滝田が出てくる

滝田「ひゃん!」

真中「あ!あの!あのの!」

 滝田、真中をみて小首を傾げるが、納得した様子で笑顔を作り握手をする。

真中「ありがとうございます!」

 滝田ゆったりと微笑みながらその場を立ち去る。真中、滝田の背中を見送り涙する。

〇占い館リリス・蓉狐の個室(夜)

 簡易な机の上には紫のサテン布のテーブルクロスと水晶球、髑髏。月影蓉狐(48)と真中が机を挟んで向かい合っている。

蓉狐「ていうか、あなたそもそも妻子持ちでしょ?」

真中「どうしてそれを!」

蓉狐「占いでもなんでもないわよ」  

 蓉狐真中の左手を掴み上げる。真中の薬指に指輪。

蓉狐「見た所営業職でも無さそうだし、わざわざ結婚指輪をつけてるのは奥さんが怖いかモテたいかその両方か」

 真中手を払い怯える。

蓉狐「あとこれね」

 机上のスマホを取り上げる。壁紙に子供の写真。

真中「今までとは違うんだ!本気なんだ!あんなに綺麗な人…それにあの歌声」

 蓉狐鼻で笑う。

真中「人の恋心を笑うような占いなんて言語道断だ!金返せ!」

蓉狐「だから言ってんでしょ。占いじゃないって。まだ占ってないでしょ何も」

真中「だったら早く占えよ!」

蓉狐「はいはい」

 蓉狐カードをめくる。めくる手を止めて視線を逸らす。

真中「おい、なんだよ!なんなんだよ!」

蓉狐「あんた、この先観る腹括ってんの?」

真中「え…」

蓉狐「恋はいつだって修羅。こっから先は親愛なる地獄だよ」

 真中ゴクリと喉を鳴らす。

〇オーソライズシステム社・技術事業部

 静かで洒落たオフィス。真中PCの前で固まっている。

社員1「真中さん、真中さん、まなかさん!」

真中「わぁ!大きな声出すなよ!」

社員1「大きな声なのは真中さんですよ、さっきから話しかけてるじゃないですか」

真中「そうだったかすまん」

社員1「今日19時からの会議なんですけど」

真中「え!19時から?」

社員1「そうですよ?」

真中「や…俺…」

社員1「え?」

真中「お腹痛い。帰るんで後よろしく」

社員1「え!ちょっと真中さん!」

〇ナイトクラブモンシェール裏口(夜)

 真中が薔薇の花を一輪持って立っている。右手に薔薇、左手にあるスマホの画面には子供の写真。指輪と薔薇を見比べる真中。扉が開く。滝田が現れる。

真中「あの!」

滝田「…」

 滝田微笑みゆっくりと首を振り薔薇を押し返し立ち去る。取り残される真中。

〇ナイトクラブモンシェール裏口(夜)

 薔薇を10本程抱えた真中。滝田扉から現れる。優しく首を振って去る。

〇ナイトクラブモンシェール裏口(夜)

 真中が薔薇を30本程抱えて立っている。滝田が首を振って立ち去る。真中薬指の指輪を抜いて投げようとするが投げられずポケットに入れる。

〇ナイトクラブモンシェール裏口(夜)

 雨が降っている。ずぶぬれの真中両手に溢れるほどの薔薇を抱えている。滝田現れてため息をつく。野太い声で話し出す。

滝田「夢を奪うのは気が引けるんだけど」

 滝田髪の毛をグイっと引っ張る。カツラが取れて五分刈りの頭が現れる。

滝田「ごめんね」

〇占い館リリス・蓉狐の個室(夜)

 水晶玉を挟んで向かい合う真中と蓉狐。

蓉狐「お、男だったの?」

真中力なく頷く

真中「俺…どうしたらいいんだろう…」

蓉狐「まぁ、良いんじゃない?」

真中「何が!」

蓉狐「最近は世間の目も理解があるし、こう、ダイバーシティよ?」

 真中机を叩いて立ち上がる

真中「世間が許しても!」

蓉狐「わっ」

真中「世界中の神々が許しても」

 真中力なく座り込む。

真中「俺の神様が、許さないんだ…」

 真中頭を抱える。

蓉狐「私は言ったわよ、親愛なる地獄だって」

 真中背を向けて帰ろうとする。

蓉狐「でもそれは、本物の恋だからよ」

真中振り返らず胸に手をあてる。手をあてた左手の薬指には指輪の痕。

〇オーソライズシステム社・技術事業部

 真中の周りに数人の社員が集まって資料をやり取りしている。それぞれの口は動いているが声は聞こえない。

社員2「…です。真中さん、これでオッケーですか?」

真中「…」

社員「真中さん!?」

 真中窓にはりつく。

真中「はぁあああ!」

社員「真中さん?」

 真中、こけつまろびつオフィスを飛び出していく。真中が覗いていた窓からは工事現場が見える。

〇ビル工事現場出入口(夕)

 ニッカポッカを履いた集団が談笑している。真中走りこんでくる。

鳶「おい兄ちゃんこっから先は進入禁止だよ」

 背後、鉄骨を運ぶ滝田が通り過ぎる。

真中「あ!」

鳶「お、滝田、今日はもうあがんな!」

滝田「おいっす」

 滝田振り返る。真中と目があう。ゆっくりと首を振る。

〇工事現場前ガードレール(夕)

 滝田と真中並んで腰かけている。

滝田「よく僕ってわかりましたね」

真中「あの俺」

滝田「ちょっと付き合いますか?」

真中「はい!」

〇東京都総合病院・302号室前(夜)

 302号室東野清のプレート

〇同・302号室(夜)

 ベッドの上で呼吸器をつけて横たわっている東野清(82)入り口で立ち尽くしている真中。ベッド脇で東野の手を取っている滝田。

滝田「意識はもう戻らないんだ」

 滝田東野の手を取ったまま呼吸器マスク越しにキス。

滝田「これが僕の恋人」

 真中両手のこぶしを握り締める。

※※※※※※※※※※

私なりにはなかなかロマンティックなキスシーンだと思ったのですが、周囲からはこれは「逃げ」だよ~と言われた次第、難しいものです…

映画メゾン・ド・ヒミコがイメージにあったのかと思われ 

そして「ののはホリック」に次ぐ歌物です 喝采を流したいだけの何か

こちらはTOKYO MX 月~金 7時~8時 堀潤モーニングFLAGの10月エンディングテーマ「愛のバビロン」を歌っている わたなべまきさん

が、カバーする「喝采」です

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