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死神の降りる海

シナリオスクールの特講で演劇脚本の講座があった時に書いたものです

何か書き続けていると生と死に辿り着いちゃってヌーンってなる時期ありますよね、ないですか?私はちょくちょくあります

さて、本題

  人 物

堤光(38)派遣事務員
高平務(50)メキシコ料理店店主
園部孝二(70)元鉄道職員
野塚裕二(17)高校生

あらすじ

~自殺を考え冬の海に訪れた堤光(38)は、元刑務官高平務(50)が営む料理店にたどり着く。そこに集まる死と生の境にいる人々と出逢い自らの処遇を決めていく~

一幕 一場
   
 場内に静かな雨音
 中央の花道を堤光(38)がお腹を見つめてさすりながら歩いてくる。

光  ごめんね、君まで道連れにして。今度こそ幸せになれるはずだと思ったの。何のとりえもない私が年甲斐もなく恋をして幸せになろうなんて、図図しかったみたい

 舞台上にはスペイン料理屋。カウンター内に高平務(50)板付き。下
手に入り口。上手にも扉。

光 (店をみつめ)最後くらい、美味しい物でも食べようか。

 雨音はいつしか波音へ
 光下手の扉より店内へ

高平 おや、いらっしゃい 
光  あのぅ、まだやってますか
高平 いやいや、店はやってるけどその前に
光  え?
高平 ずぶぬれでないの?寒かったっしょ!
   
 高平タオルを持って行き光の頭を拭いてやる

光  あ!ごめんなさい!床とか濡らしちゃって。こんなんだから…私。
高平 なんもなんも!そんな事気にしないでいいよ~!それよりゆっくりあったまってきなぁ~(光の頭に手を置く)
光  ごめんなさい…(泣きだす)
高平 うんうん、好きなだけ泣きなさい。今あったかいスープでも用意すっから。

 高平カウンターに戻りながら

高平 話したくなったら聞くし、話したくなかったら、そのままでいいし。まぁ座んな。
光  ありがとう…ございます

 光、おずおずとカウンターへ進む

高平 こんな寒い冬の海に来る人なんてのはさぁ~。みんな、色々、ある。あんまり硬くなんないでさ。あ、スープあったまるまでこれでも食べてて。

 高平カウンターに座った光の前にお菓子を一つ差し出す。

光  ありがとうございます。おか…し?って!わ!髑髏!どくろ?
高平 (笑う)びっくりした?これはね、オフレンダと言ってメキシコのお   祭りで食べるお菓子。
光  ちょっと…悪趣味ですね
高平 ごめんごめん(笑)これね、生きている人の名前が書いてあったりするの。
光  え!?なんでですか?
高平 いつか訪れる自分の死を思い出させる為だって。
光  自分の、死…
高平 ところでお酒は飲める?あ、えっと~
光  あ、堤です。堤光。
高平 おぉ!光ちゃんね!僕高平、宜しくね。で、光ちゃんはお酒は飲める 方?(強そうな酒瓶を手に取って)
光  ええ。あ、でも(お腹に手をやる)今日はやめておきます
高平 そうなの?あら、残念だなぁ

 カランコロンという音と共に下手から園部孝二(70)が店内に入ってくる 園部、店内の一人席に座る

園部 おや、今日は可愛いお客さんだ。マスター駄目だよ、決心を鈍らすような事をしちゃ
高平 そういう園部さんは、あのドアから出る決心固まった?(上手を指さす)
園部 スープ飲んでから考えるよ
高平 ははぁ、今日もダメだな

 下手からカランコロンという音と共に野塚裕二(17)が入ってくる

野塚 こんにちは
高平 おぉ、裕二君。寒い中お疲れ様。どう?体調は?
野塚 順調に悪いね
高平 そりゃなによりだ。あ、光ちゃん二人を紹介するね。死にたい人と(園部を指す)死んでいく人だ(野塚を指す)

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※イイネが5個以上付いたら、11月以降で続きを書こうかと思います

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