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鬼さんこちら実のなる方へ

その家は名もわからぬ山の中腹にあった

いや、山と言えただろうか

とにかく鬱蒼とした木々をかき分けかき分け上り下りをした先にポツンと、時代遅れの、それは、掘建て小屋とも言うような

中にはいつから飾られているのか、日に褪せた季節外れの吊るし雛が下がり

軒先には大根と柿が下がっていた

ぼんやりとそれらを眺めている自分の背中に突如老婆の声が投げかけられた

どうしました?

あぁ、いや、すいません

都会の人ですか

えぇ、ちょっと探し物に入ったら道に迷いまして

柿なんぞ珍しくもないでしょう、都会の人には珍しいんですかの

あ、いえ、柿ではなく

ここいらでは

老婆は柔らかく笑って言った

なんでも、吊るします、ええ眺めでしょう?  

ゆらぁゆら、とねぇ…

どんなに憎らしゅうて腹の立つもんでも吊るして揺らしてみれば、雛みたぁもんで、かわゆぅ見えてきます

あぁ、都会の人、そっから先は行かん方が

私らからみたら可愛いもんでも、あんたさんには…なぁ

今回はシナリオ学校の習作ではなく、旅先でTwitterに書いたスケッチみたいなものです

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