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【こんばんはスナックボンヂュールです 前編】

ナレーション
「ここは夢乃崎町のはずれ黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)区にあるスナックボンヂュール、年齢非公開のレイコママと愉快な仲間達が今夜も寄り合っているようです」

スナックボンヂュール

所々禿げた赤いコールテンばりの椅子が配置されたカウンター5席とソファー席が3セット、1セットは物置と化している

タダノリ「あ、ママぁ、またカラオケ止まっちゃったよー!?」

レイコ「えぇ!もうー!このポンコツめ!こうしてやる!」

レイコカウンターから身を乗り出してリモコンとレーザーディスクを交互にバンバン叩いている

乗り出しついでにタダノリに乳があたる

ヤスノリ「あ!こんのやろー!タダノリてめぇ、ポヨンポヨンに触りやがったなぁ!それは俺の大事なポヨンポヨンだぁ!」

タダノリ「なんだとぉこのやろぉ!いつからオメェのになったんだよ!俺に当たったんだから俺のポヨンポヨンだこのやろー!」

二人お互いに襟首をつかんで取っ組み合う格好

レイコ「あー!うるさいねぇ!喧嘩やるなら外でやんな!だいたいねぇ!このポヨンポヨンはあんた達のどっちのものでもない!私のもんだよ!私がうん10年大切に大切に塩と脂で育てた脂肪だ!お前らにしのごの言う権利はない!文句があるかこのやろぉー!出てけ!出てけ!」

タダ「そんなぁママぁ」

ヤス「そう言わずにぃ」

タダ・ヤス「もう一杯くだざぃ」

レイコ「まったく、しようがないねー良い年していつまで兄弟喧嘩なのよ。あんた達の喧嘩で開けた穴でこの店ボコボコじゃないのさ全く」

SE カランコロン

一人の女性が入ってくる

レイコ「はい、いらっしゃい。あら?一見さん?あぁ、大丈夫よ。うち一見さんでも全然平気な店だから遠慮なくどうぞ。」

ユウ「あ、ありがとうございます」

タダ・ヤス「うっふぅー!いい女ぁ!」

レイコ二人の頭をスパーンと立て続けにはる

レイ「ごめんなさいねぇ、ちょっとカウンターうるさいからそっちのソファー使ってくれる?水割りでいいかしら?」

ユウ「あ、はい」

レイ水割りセットを用意してユウに運ぶ

ヤスノリ「あんまりここいらで見ない顔だよなぁ」

タダノリ「うん、あんな別嬪さん見たことない。ゲンちゃんと並ぶな。」

ヤス「え?ゲンちゃんて風呂屋の?」

タダ「うん」

ヤス「源三郎?」

タダ「うん」

ヤス「お前あぁいうのタイプ?」

タダ「まぁなぁ、ススム君がいるから俺の入る余地は無いけど、優しくて力持ちで、みんなのアイドルじゃない」

ヤス「まぁなぁ、でもお前基本強いやつ好きなぁ、ママといい」

レイコカウンターの中に戻る

レイ「なんか言ったぁ?」

タダ・ヤス「なにもぉ」

レイ「私ね、わかるわよ、長年の勘。」

タダ・ヤス肩をすくめる

レイ「あれはね。わ・か・れ・ば・な・し。」

ヤス「え?なになに?」

レイ「いつもの飲み屋で別れ話じゃやりにくい、二人の顔を誰も知らない町でちゃんと腹括って話し合おうっていう。そういうやつね。ここまでやるにはなかなか深い仲とぉ、見ました。はい。」

タダ「さっすがママ!」

ヤス「そうかなぁ?」

レイ「まぁみてなって!」

SE カランコロン

レイ「ほら来たっ!」

古びたスーツに髪の毛がボサボサの冴えない男が入ってくる

ヤス「いやいやぁ、あのいい女にあの風体の男はないない」

男、ユウの前に座る

レイ、ニヤリと笑いながらグラスを持ってソファーへ

ヤス「いや、まだ別れ話と決まったわけじゃ」

ユウ「ごめんなさい、こんなとこまで呼び出して」

コウスケ「いや、良いんだ、かえってすまない」

ユウ「元気だった?」

コウスケ「うん」

レイコ走ってカウンターに戻る
タダ・ヤス・レイ身を寄せ合ってユウとコウスケを見つめる

コウスケ「それより話っていうのは」

ユウ「その、、、今日の話っていうのは」

一同息を飲む

ユウ「少し、距離を置きたいの、あなたと」

タダ・ヤス「ほんとだぁあ!!」

レイ「ほらごらんなっ!」

ヤスノリが驚きのあまり握りしめた枝豆がサヤから飛び出してスナックボンヂュールの虚空を美しい放物線を描いて飛んでいく

ナレーション「何も起こらない夢乃崎町に今日も小さな物語、が起こるのか起こらないのか。スナックボンヂュールの明日はどっちだ」

続く

後編はこちら!↓

https://note.com/saaradeunono/n/nec3ce68b5b42?magazine_key=m52180bb625d6

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