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バイオレンスかロマンスか。映画と町中華の日曜日。


脳が麻痺する映画だった。



『夏目アラタの結婚』

元ヤンで児童相談員の夏目アラタ(柳楽優弥)が切り出した、死刑囚への“プロポーズ”。
その目的は、“品川ピエロ”の異名をもつ死刑囚、
真珠(黒島結菜)に好かれ、消えた遺体を探し出すことだった。
毎日1日20分の駆け引きに翻弄されるアラタは、
やがて真珠のある言葉に耳を疑うーーー
「ボク、誰も殺してないんだ。」
プロポースからはじまった、予想を超える展開。
日本中を震撼させる2人の結婚は、生死を揺るがす<真相ゲーム>の序章にすぎなかった・・・。

とてもおもしろかった。期待以上。
前情報なしで観たのが功を奏し、というか、爽快なほどテンポよく、死刑囚・品川真珠の言葉に振り回され夢中になって観ていた。

猟奇殺人の動機は身勝手なものだ。
不条理に家族を奪われた上に遺体を隠され、その所在を知りたいと望み死刑囚に手紙を出していた少年は夏目アラタの名前を使っていた。歪んだ文通を面白がり始めていた少年の口元を、夏目アラタは見逃さない。その目からは好奇心も覗いていたが真珠と対峙してからの感情が“怨恨”でも“使命感”でもなく、ふだんの仕事で目にする不遇な生い立ちの子供たちへ抱く“同情”と重なっていたことが意外だった。
なにより、真珠の殺人の動機が、彼女が殺したのか殺していない(死体損壊のみを手伝った)のか以上に気になって、アラタと同じく彼女の言葉に翻弄されていた。

殺された被害者や遺族への労りは?
真珠の弁護人・宮前(中川大志)はなぜそこまでして、真珠の無罪を信じていたのか?
“かわいそう”な女の子、真珠の魅力に取り憑かれる周囲の男たちに少しの違和感と憤りを覚えつつも、
アラタが「好きなタイプ」と話題に上げた同僚への剥き出しの対抗心は子どもじみていて、真珠の根底にある「愛されたい」欲望が庇護欲をそそるのかもしれないと思った。
身勝手な殺人動機。
しかしそれを取り巻く周囲の人間もまた、身勝手な感情で、真珠の生い立ち、生活を蝕んでいたのだ。

堤幸彦監督ということで期待していた部分も大きかったけれど、やっぱり彼が撮る映像の顔面アップの多さこそが、感情過多な作品になる要因だと思う。
面会室でのやりとりはもちろん、夏目の自宅で宮前との狭苦しいツーショット、他の面会人との会話も言葉以上に表情に大きなフックを感じさせられる。

なにより夏目と真珠、柳楽さんと黒島さんのアップの連続に耐えられる顔面美には、息を呑んだ。

裁判官役に市村正親さんがいらっしゃるとは……。え、そこそんなに大事なとこ? とちょっと思ってしまったけれど、揺れ動く夏目と真珠の心以上に、法律家として揺さぶられた一言がとても良かった。



一気に脳みそが疲れて、映画館を出た後にフラフラ本屋さんを歩いたり、てくてくと散歩したりしてから、先週見つけてからハマった町中華のお店で冷やし担々麺を食べた。

バラバラ殺人やらネグレクトやらと食欲がなくなる映画だったけれど、朝から何も食べていなかったので夕飯はガッツリいこうとピリ辛メニュー。

以前来たことを覚えられていて、声をかけてもらえたのが嬉しかった。先週も映画を観た帰りにこちらでランチを食べたのだ。


『愛に乱暴』

ヒリヒリとした情動に焼かれ、
私もこの愛も乱れていく。
夫の実家の敷地内に建つ“はなれ”で暮らす桃子は、結婚して8年になる。義母から受ける微量のストレスや夫の無関心を振り払うように、センスのある装い、手の込んだ献立などいわゆる「丁寧な暮らし」に勤しみ毎日を充実させていた。そんそんな桃子の周囲で不穏な出来事が起こり始める。
近隣のゴミ捨て場で相次ぐ不審火、愛猫の失踪、不気味な不倫アカウント…。平穏だったはずの日常は少しずつ乱れ始め、やがて追い詰められた桃子は、いつしか床下への異常な執着を募らせていく…。

こちらも公開を楽しみに待っていた。
愛する作家、吉田修一先生の原作小説がとても好きなので、映像化するなら丁寧にお願いします……と、勝手にお念仏を唱えながら、主役が江口のりこさんなら間違いなく好き!! 監督が森ガキさんなんて最高すぎる!! とひたすらガッツポーズ。
いや、本当に、待ってました。

作中が夏ということもあって、余計にいま観るべきだなと思った。色彩のコントラスト、明るい場所と暗い場所の陰影がどちらも濃く、映画館の暗さとほぼ一体してしまうほど、没入感がすごい。

ジリジリ音を立てる桃子の苛立ち、不満と不安が積もる毎日の息苦しさ。
発狂してしまいたいのに、すんでのところで、理性が立ち止まらせてしまう。

いっそ壊れてしまえたら、楽なんだろうな。
そんな俯瞰で見守っていたら、桃子からポツリと「もっとおかしいふりあげようか」
無機質な声がこぼれて、胸が締め付けられた。
おかしいふり。
おかしい。

浮気して、不倫して、それを隠して普通な顔して、日常を送る。仕方ないというような姑の目。
その狂気を感じ取った振る舞いが、おかしい?
おかしいのはどっちだ。
「つまんないんだよ」と勝手な理由を述べる真守に心底腹が立って、イライラが積もって真っ暗になりかけた脳内にひとしずくの「おかしいふりしてあげようか」。

声を押し殺して、子どものように泣く桃子。
淡々とした日常のなかに見つけた、ちいさな幸せを否定される虚しさ。
桃子は床の下に、壊されてしまったボロボロの半身を隠していたのだ。

ランチを食べてから観てよかった。
ぐるぐると感情をかき混ぜられてとてもお腹が空いていたので、カフェでアップルパイをたべた。

原作小説、映画装丁版も買えてうれしい。2冊目。
推し作家の本は何冊あってもいい。


1週間ぶりに2回目をみようと思っていたら、今日の公開時間はもう夜しかなかった。
帰りが23時近くなってしまうし、今日は朝まで深夜中ずっと仕事をしていたから早く寝たい。
来週また観にこよう。



2週連続気になっていた映画の公開があって、好きなお店も見つけられてとてもいい週末を送れている。

仕事でプロジェクトを増やしたことで土曜の深夜もせっせと仕事をするようになり、週休一日の日々。
まあそれでもこうして一日のなかにギュッと幸せを詰め込んで、自分を大切にして生きて行きたい。


愛する我が推し、藤原竜也さんのラジオでメールが採用されていて飛び上がった。
こちらも2週連続。
小さなことだけど、わたしにとってはとても大きな幸せ。
「ありがとうございます」
御礼を言いたいのはこちらです。
推しに名前を呼んでもらえるって贅沢だ。

ドラマもクランクインされている。
どうか無事に、楽しく撮影を終えられますように。
10月9日が待ち遠しい。

また1週間がんばろう。


帰りがけに追いかけてきたバイトの子からいただいた
お店の名刺と、ミニあひる。
こうゆう気配り、とても好きです。

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