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父の梱包

秋になると、
実家から包みが届く。

畑で採れたさつまいもだったり、
地元の栗だったり、
ハロウィンのお菓子だったり、
子供達へのちょっとしたプレゼントだったり、
が入っている。

その包みはだいたい夕方に届くから、
私は料理していて手が離せなくて、
夫が子供たちと一緒に開封する。

開けながら、夫はいつもこう言う。

「今日もお義父さんの梱包は、
 素晴らしいなぁ!」


一つ一つ、
どうしたら潰さずに、
そして中身がガタガタ揺れずに、
最小でも最大でもなく適切な大きさの箱で送れるか、ものすごく考えられている。

と夫は言う。

へー。
確かに、言われてみたらそうかも。
と、私は思う。

箱の中に、緩衝材を入れたり、
ちょうど良い仕切りがなければ手作りしたり、
足りないスペースにはティッシュ箱が入れてあったりする。

年老いた父が、一つ一つ丁寧に、
揺れ具合を確かめながら、
贈り物をダンボールに詰めるさまは、
ちゃんと想像すると涙が出そうになる。

どんな思いで、詰めてるのか、とか。

だから、あんまり考えないようにしていた。
思い入れすぎるとツラい。
私の周りの友人たちは、
地元の子も、今近くに住んでいる子も、
みんなみんな自分の生まれたところ、親の近くに住んでいる。
一時期、離れていた人も、この歳になってまた帰っていく。
そのことを最近、特に感じている。

だから、考え始めると、
近くにいてあげられなくて、ごめんね。
の気持ちで、胸が痛くなる。
だから、もう、できるだけ淡々と受け取ってた。

でも、
私の反応に関係なく、
毎度のことでも、
今日初めて出会ったみたいに、梱包具合に感動している夫。

夫が言ってくれて、良かったなと思う。
私の代わりにその父の送る包みを、
ちゃんと受け止めてくれる人が、
そばにいて良かったと思っている。

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