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書きたいこと、だけじゃない。

 こんにちは、亀山真一です。
 とはいえ今日は美鶴さんの話をします。一人称は「僕」のまま。

 昨年末にお話をいただき年明けに書き上げたご当地ストーリー、その第2弾をゴールデンウィーク明けに依頼されておりました。

 今回も8000字のストーリー≒あらすじと伺って話を受けたのですが、いつの間にか8000字の短編小説になっていました。
 聞いた瞬間は「いや、初耳なんですけど!?」と狼狽えてしまいましたが、その方がネタも少なくて済むため書きやすいことに気付きました。僕と美鶴さんの小説の売りは、テンポよく繰り広げられる会話の応酬ですからね。描写すべき背景さえきちんと調べられれば、何の問題もありません。

 打ち合わせで「ご当地」にするために絡めてほしいイベントの概要を聞いた後、発注元ではなく仕事を紹介してくれたもの書き学校側にプロットを送ります。いつもライトノベルを添削している先生が、こちらにも赤を入れてくれました。

「……どうしよう? 先生の赤の意味が全く分からない!」

 一晩絶望して気が付いたのは、先生がキャラクターの性別を勘違いしているらしいということでした。
 近頃、美鶴さんはもちろん亀山も女性主人公ばかり書いていたので、特に指定はなかったし男性主人公の恋愛小説を書くつもりでいたのです。久しぶりに一人称「俺」の文章を書きたいなと。

 この齟齬について確認しつつ、直しの方向は理解したので男性主人公でいいかと尋ねたところ――。

「男性主人公の恋愛小説は難しいと思います」

 ……何で!?

 もともと僕、村山由佳さんの「天使」シリーズから恋愛小説を読み始め、ライトノベルといえば「おいしいコーヒーの淹れ方」シリーズだと思っていた人間なんですよ。だから男性主人公の恋愛小説に何の違和感もないし、実際に『マーメイドブラッド』みたいな小説を書きます。

 とはいえ、女性主人公が前提ならば仕方ありません。めちゃくちゃになってしまった相関図を整え、容赦なく赤が入っていた「ご当地」のイベント絡みのネタだけは死守したプロットを送り直しました。
 美鶴さん的には書きたいクライマックスに持っていくために結構強気に突っぱねたつもりだったのですが……あっさり通ってしまいました。

 講義の際、いつものライトノベルの方は直しがなかったため、すぐにプロットの話に移ります。

「結月さんに頼んで良かったです。ホントに切り替えも直しも早くて」
「だって、そこは呑まないと話が進まないじゃないですか」
「そこを譲れない人もいるし、譲れなかったらプロになれないんですよ」
「私は正直〈あのネタ〉さえ通れば」
「いや、そこは何だっていいんですよ」

 先生との会話で、つくづく僕は「ネタ」にこだわる作家であり、先生は「ストーリー」でプロットを添削しているのだと気付かされます。
 現在執筆中のライトノベルのプロットの時にも同じようなことをやっていました。

「結月さんの書きたい話ではないと思いますが、仕事なので頑張って書いてください」
「……はい?」

 あんなにこだわってゴリ押したネタが、先生にとっては枝葉末節すぎてこだわっていることに気付きもしないんですよ。むしろ戸惑ってしまいます。

 逆に僕にとって、ストーリーは代替可能なものなんでしょうね。
 まずは書きたいネタがあり、それに合うシチュエーションに落とし込み、ストーリーに発展させたものがプロットです。そのプロット≒ストーリーに直しを食らったとして、シチュエーションを修正した後、書きたいネタをもう一度滑り込ませると――。
 書きたいことはだいたい書けるし、今回に限っては書きたい「話」という認識もしていなかったようです。男性主人公の恋愛小説はまたの機会に書けばいいですからね。

 ……と、話を終わらせたかったのですが、美鶴さんがライトノベルに戻ってきてしまいました。
 またしても大きな声では言えない話です。

 ライトノベル4作目の再校が届きました。過去の記事でこっそり(?)書いたように、こちらの作品には表紙とそれにまつわる修正の因縁があります。
 その点に関して前回の直しの際に「イラストレーターさんは悪くありません。ウチの若いのが失礼しました」的な文面が、編集部の責任者から伝言ゲームで送られてきておりました。

 すると再校では、タイトルに担当さんからのコメントがつきました。やり方が子供じみていると先生が呆れておりました。
 でも「間に入った責任者さんが困っているので今回はこちらが折れましょうか?」と提案してきた先生のタイトルの例があまりに気に入らなかったので(相変わらず先生は美鶴さんのこだわりポイントが分かっていないので)それすら根拠にして担当さんのコメントを論破し、ケンカする準備をしていると――。

「あれ、意外といいタイトルを思いついたぞ……?」

 やはり問題は伝言ゲームなんでしょうね。担当さんとも直接やり取りしていれば分かり合えたかもしれないと、今は亀山が亀山の作品に関して編集さんとやり取りしまくっているので思います。
 結局は「最初のタイトルはこういう意味なので全然問題ありませんし、一応考えてみたらかなりいいタイトルを思いついたんですけどどっちがいいですか?」みたいなテンションのコメントを残して送り返しました。

 まだ返信待ちの状態ですが、これ以上は向こうもケンカできないことを願っております。なんたって僕も美鶴さんもメンタルめちゃくちゃ弱いので。
 先生は切り替えが早いとかちゃんと注文を呑んでくれるとか言ってくれましたが、最初の赤は「怖い、無理」と一度に全部読めないし、直しの指示に絶望して「死にそうな顔してる」とか母から言われるし、そこで一通り愚痴らないと原稿に手が着かないんですよね。

 プロの仮面をかぶった、こだわりが強くメンタルの弱いもの書き志望は、今日も必死にライトノベルを書いております。

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