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冬野が書いた小説・随筆

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オリジナル小説。私小説よりのものが多いです。 加えて、リリースした商業小説についても。
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2022年10月の記事一覧

小説「多摩」

小説「多摩」

深夜の東急大井町線。
大岡山駅から、溝の口駅行きの電車に乗る。

体勢の崩れた老人たちはスマホでニュースをダラダラ見たり文字を打ったりし、若い女の子はドアのそばにもたれて、iPadにApple Pencilで作業している。

水曜日の深夜だが、それなりに人は多い。
やはり沿線は人が好んで住む場所に設計されているのだろう、それが東急電鉄の使命だろうから。

車内では、美しい風貌の若い男が目立つ。だが

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