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コレクション本の愉しみ 2

世の中に心惹かれるものはたくさんある。
けれど気質的に私はコレクターではない。
年齢を重ねてからは、本当に必要なシンプルなものを考えに考えてから買うようになってきた。

その二律背反を解消してくれるのが「コレクション本」だ。
そういう本を私はコレクションしている、ということをこの記事で書いたのだけれど、

その第2弾。


まず何といっても「グリコのおまけ」 筑摩書房謹製


シンプルなタイトルそのままに、グリコのおまけのコレクション集。
写真と、ところどころにそれらについての文章が挟まれている。

これが目次

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魅力的なのは集合写真以外のおまけの写真が実物大だということ。
そして挟まれた小文はこの本に寄せられたものもあるのだけれど、それ以外に例えば、江崎グリコ創業者・江崎利一氏の「商道ひとすじの記」から「オモチャとしての豆玩具を提供しようと考えた」部分が引用されていたり、グリコのおまけを連想させるような茨木のり子やサトウハチローの詩が載せられていたりする。

特に惹かれたのが、「グリコ日記」
「グリコ日記」とは《集めたキップの枚数に応じてもらう引換賞品のひとつ(昭和9年以降)。一般書店にも置かれ、博文館の日記と並ぶ売れ行きだった》そうだ。
それに書かれた【植田敬】という少年の昭和16年4月1日と4月3日の日記の内容が掲載されている。
彼は新年度初等科6年になったと記述がある。

《今日より國民學校である》とか《竹を切つてきて機関銃を作つた》とか、当時の戦時色に染められた様子が見て取れる。

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こんな日記が残っているなんて、グリコ日記が当時の子供たちに普及していたことが分かる。
出来れば日記の内容だけでなく、日記そのものの写真も見たかった。

同じ感じで楽しかったのが、「豆文」

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よくわからないのだけれど《昭和8年4月から朝日新聞・毎日新聞両紙にほぼ毎日掲載。広告部長の岸本龍郎が自ら文とカットをてがける。昭和12年からは読者からの投稿を採用、文集も発行された。》という説明がある。
多分グリコが毎日グリコに関する「豆文」を広告として掲載していたのだろう。
その読者投稿が当時のまま写真で掲載されていて、
特に「アタラシイ ヨウフク グリコ イレテミル」なんて、すごくかわいらしい。

グリコの文字だけ太字な所広告っぽくてつい頬が弛む^_^

ともあれかわいらしさとノスタルジーあふれるおまけの数々、きっと見ればほしくなるけれど、ちゃんとディスプレイも保管もできないしコレクションしきれないだろう私を救う、ぎゅっと抱きしめたくなる一冊。


2冊目
「どこかにいってしまったものたち」 クラフトエヴィング商會著


どんなものが扱われているのか、まず目次の写真をどうぞ。

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ふむむ・・・怪しげ。

これら、かつて存在し「クラフトエヴィング商會」で取り扱っていたけれど今はどこかに行ってしまったものたちが時代別に分類され、当時の新聞広告や残されたパッケージ、取扱説明書などの写真とともに解説が載せられている。

例えば硝子蝙蝠、万物結晶器、人造虹製造猿に水蜜桃調査猿・・・

??

・・・・・実はこれ、架空の品々のコレクション本。
妄想を掻き立てられる品物の数々・・・これを「あったもの」としてその痕跡を作ってしまう情熱というか執念というか発想力というか・・・

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クラフトエヴィング商會とは【明治から昭和二十年代までを時代設定とし、架空の書物や地図、および架空の機械の解説書、パッケージなどを作る二人の女性を中心とした制作ユニット】だそうな。
とにかく制作物がすごいクオリティ。展覧会や本の装丁などもされているそうだ。

これらの品々(の痕跡)を眺めていると私の妄想も膨らむし、江戸川乱歩や「鎌倉物語」の世界へ入りこむこと間違いなし。


3冊目
「わたしのすきなもの」 福岡伸一著


目次の一部

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私は福岡伸一という生物学者がとても好きだ。
Eテレなどのいろいろな番組に出演して話されている内容や雰囲気、口調、朝日新聞のコラムなどなど・・・
(実はちょっとフットボールアワーののんちゃんに似ているな、などと失礼なことも思わないでもないが、そこも含めて好きなのだ)

その福岡博士を形成してきたいろいろなものたちが写真とともにご本人によって語られる。

目次に載っている「ドリトル先生」。福岡少年があこがれ、福岡伸一という生物学者が誕生するきっかけとなった作品、というか人物だとか。
その理由は内容を読んでみてほしい。
「ドリトル先生シリーズ」は私も古い岩波少年文庫で全部持っている。

その次の「はるみ」はお母さまが溺愛していた猫。福岡家は圧倒的な猫派だそうな。親近感w

気になるのは「逆引き広辞苑」
どんなものかは写真とキャプションでどうぞ。

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もう少し詳しく解説すると、普通の辞書は単語の頭の音を五十音順で並べてあるけれど、この辞書は単語の尻尾の音で並んでいる。
見出しの写真だと「~とも」で終わる語が並んでいる。
博士は日米往復生活の中で、長時間のフライトの間のクロスワードパズルを埋める時なんかに、英語のこういう辞書を愛用していたらしい。例えば「~ism」で終わる言葉を探したい時など。
日本語でこんな辞書があると面白いのに、と思って探したら実在したのだそう。
惜しいことにいまは絶版・・・と書かれていて私も残念。


最後、以前にも紹介したけれど
「THE SCRAP 懐かしの一九八〇年代」 村上春樹著


これも目次の一部を写真でどうぞ。

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1980年代の出来事や流行ったものについて村上春樹が文章をつけている。
もちろんその出来事などを選ぶのも村上さん、文章は当然単なる解説ではなく村上エッセンスたっぷり。
そしてこれはうろ覚えなのだけれどこの中に「オサムグッズ」について触れられていた一文があって、その「オサムグッズ」の一語で、ぶぁーーーーっと、中高生の私が好きだったテイストなんかがよみがえってきて、「あーそうだったよなー」ってなって、ちょっと強烈に印象が残っている。
(ただ本当にこの本だったか自信がない。またゆるゆる読み直してみようかな。一気に読む本ではないw)


オサムグッズみたいな感じのものがすごく好きだった連想で、内容とともに絵柄もとても好きだったマンガがこれ。

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成田美名子の名作「エイリアン通り(ストリート)」
ちゃんと元のコミックス版がどこかにいってしまい、文庫版だ。

その中の絵柄で、当時私がとても好きだったのがこういう感じ。

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水玉模様のグラスのポップな感じや背景の小さいドット柄、ウェストコーストのヤシの木に白い板張りの部屋、そしてビートル・・・ベタだけどあこがれていたなぁw

その後も成田美名子の作品はたくさん読んだけれど、内容的にも「エイリアン通り」が一番好きかな。


最後は好きなマンガの話に逸れてしまった。
純粋なコレクション本は「グリコのおまけ」だけかもしれないけれど、このようにちょっと風変わりで心惹かれる写真に文章をつけた作りの本を、私はコレクション本と称して愛でている。

五木寛之さんの愛する品々を紹介するコレクション本もあって(文庫サイズだったような)、その中に中東の女性が愛用したという「涙をためておく瓶」みたいなのがあったのを今思い出した。

宮殿の奥深くに大切に隠された(でも籠の鳥ともいう)アラブの貴婦人の流す涙を集めるための美しいガラスの小瓶・・・・何と神秘的な。そしてやはり悲しい。
ちょっと深く考え始めると、フェミニスト的ないろいろがむくむくと頭をもたげるのだけれどひとまずそれは置いておいて・・・。

今度その本も探してみたい。まだ本棚にあるといいのだけれど。
どういうわけだかあるはずの本が行方不明なことも多々ある。






お読みいただきありがとうございます。楽しんでいただけたなら嬉しいです😆サポート、本と猫に使えたらいいなぁ、と思っています。もしよければよろしくお願いします❗️