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ぶどうの花のにおい


数日前に咲き始めたのに気づいたぶどうの花。
ヘッダー画像や下の2枚の写真、先週の土曜日のものだ。

だいぶ拡大したけれど、実物は指の長さほどもない房から、髪の毛より細い糸のようなものが出て、その先に白いポワポワが付いている。

本当にとても小さく、意識して近寄らなければ気づかない。

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我が家は趣味で巨峰を一鉢、鉢植えで育てているだけだが、この小さく見栄えのしないぶどうの花は絨毯のように広がるぶどう棚からだと本当に存在感のあるいい香りを放つ。

特に夕方から夜、空気中の湿度が増してくると、えもいわれぬ甘やかで爽やかな、ちょっぴり蠱惑的だけれど青々と清々しいにおいが辺り一面に満ちる。

私はぶどう棚だらけの果樹地帯で育ち、中学生くらいまではぶどうの花なんて気づきもしないまま、このにおいだけは5月のとっぷり暮れた部活終わりに胸いっぱい吸い込んでうっとりしていた。

においの正体なんて考えもせず、あらゆるところがもっさもっさと新緑で萌え立つその匂いだと思っていた。

結婚して実家から少し離れた、ぶどうより桃が多い地域に住み、ぶどう棚の近くを通った時、初めてその香りの正体に気づいた。

あの空気全部を濃密に満たすにおいが、こんな小さな、しかも数日間だけのしょぼしょぼの、花とも言えぬような花から発せられているとは!

見た目はしょぼしょぼでも、5月の闇の中から素晴らしい香りで「ここにいる!」と存在感を放つぶどうの花、とても尊く愛おしい。
(花が咲き始めて4日が過ぎた今日は、もう下の写真の通り、花は茶色く変色し花の下にぶどうの実が結実し始めている。本当に短い期間限定なのだ。ぶどう園地帯だといろいろな種類のぶどうが時期をずらして花を咲かせるのでもう少し長く匂いも楽しめる)        

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このことは去年の秋にも400字で記事にしたけれど

読んでくださる方にぶどうの花の実物をぜひ知って頂きたくて、写真を投稿した。
そのにおいは残念ながらどんなに言葉を尽くしても伝わらないので(しかも私の語彙力)、この時期ぶどう栽培の盛んな地域に行って夕方ぶどう園の近くを散歩していただくしかない。

あまりのいいにおいにきっと驚かれると思う。


この記事で2か所ほど、語感上「香り」という言葉を使ったけれど、ぶどうの花が放つその妖しいまでの生命力は、もっと生々しい「におい」という言葉がぴったりだと思う。
「香り」は、少し洗練されすぎて人工的なイメージがする。

それから私は普段からぼーーーっと生きていて、チコちゃんに叱られてもいいし何なら鈍感力を高めているのだけれど、匂い・香りには敏感で、特にこの、植物の匂いに対する鋭敏さだけは、ずっと持ち続けたいしこだわり続けたい。
(そう言えば先日も植物の匂いに関する記事を書いたのだった。)






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