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朝焼け、寝顔を眺めていた。


中学時代から、不眠症だった。


中学生の頃から、夜はなかなか寝付けなかった。
色んなことを考えてしまって、頭の中がぐるぐるしてごちゃごちゃしていて、夜は寝付くことが出来なかった。

本を読んだ。沢山本を読んで時間を潰した。
朝、少し明るくなったころ、誰かが起きないようにそっと家を抜け出していた。
今思えば、そんな少女が危ないことをしていたなと思うけれど、その時間が好きだった。


少女だった。


私の住んでいた場所は、同級生の女の子が私を含めて3人しかいなかった。ドの付くような田舎だった。
何も無い場所だった。

何も無い場所で、日が登らない空を見上げていたら私しかいない、私すらも景色の1部になったみたいだと思えた。薄着で露出した肌と頬を撫でる風が心地よかった。


女性になった。


東京の町は、夜、眠らなかった。
騒がしい街が好きだと思えた。1人じゃないと思えた。
寂しくなかった。
毎日、毎日、毎日、夜遊びをした。
何故ならば私はひとりじゃなかったから。
私は、忘れていた。
空っぽだった。どれだけ夜を埋めようとも私には何も無かった。
私が好きだったのは、私が愛していたのは、あの時間だったのに。


朝を忘れたのは、いつからだろうか。


誰かの温もりに触れても何も暖かくなかった。
夜遅くに帰ってもやっぱり眠れなかった。
そのまま朝が来た。
朝日が眩しくて、優しい光だった。
初めから何もいらなかった。
要らなかったのに求めてしまったから、私は何も埋まらないままいた。

朝焼け、あなたの寝顔を眺めていた。
ずっとこの光景が続けばいいとおもって、写真を撮った。

おはよう、朝だよ。

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