恩田重直

調査研究に明け暮れて、はや四半世紀。現地調査で培った「もの」の見方と、文献調査で養った「こと」の読み方、そして論文執筆で育んだ論理的思考を源泉に、空間と社会のなぜをひもとく。

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    論文に限りなく近い体裁の文章は、どこまで読まれるのか(noteをはじめるにあたって)

     はじめて一編の記事を投稿してから、3日が経った。閲覧数を見ると、じっくりと読まれているのかどうかは抜きにして、それなりに人々の目にさらされるようだ。著者の情報もきわめて限られている中で、この記事を開いてくれた方々には、感謝したい。  最初に、自己紹介しておく必要があるだろう。ニックネームに使っている「恩田重直」は本名である。紹介文にも書いた通り、これまで調査研究に勤しんできた。専門分野を硬い書き方で書くと、「工学」の中の「建築学」、その中の「建築史学」、その中の「アジア建

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      • メルカリの世界:10 苦手な価格交渉

         ここまでは、「売る」をはじめて目の当たりにした、予想だにもしなかったことを書き綴ってきた。一方で、予想通りだったこともある。日本のメルカリ利用者は価格交渉ができない、というのはその一つである。理由は至って簡単で、今日の日本において、日々の暮らしの中で価格交渉の場がほとんどないからだ。  1970年代初頭生まれの筆者にとって、日本での価格交渉で覚えているのは、中国留学を控え、コンピュータやカメラといった調査研究に欠かせないものに加え、それらに必要な備品の数々を、秋葉原や家電

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        • メルカリの世界:09 暗黙のルールという幻覚

           「ごみ」だと思い込んでいたものが、売られている事実は、あまりにも衝撃的であった。その衝撃には及ばないものの、驚いたことは、まだまだある。  「売る」をはじめる前、つまり「買う」専門だった時に、なんとなく感じていたことの一つに、メルカリ内の暗黙のルール(rule。以下、規則)のような存在がある。この得体の知れない規則の存在を盲目的に信じ、購入する際には、細心の注意を払い取引することを心掛けていた。メルカリからはじき出されること憂慮して。その暗黙の規則とは、購入前に出品者に一

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          • メルカリの世界:08 後塵の「ごみ」屋の奮闘

             まずは、在庫の確認から。抱えている商品の状況がわからなければ、出品どころの話ではない。ごみを分別するように、商品在庫をブランドごと、大きさごとに分類した。商品たる紙袋は、瞬く間に、居間一面にあたかも絨毯のように広げられた。  次に、この分類をもとに、出品に向けた商品の組合せを考える。その上で鍵となったのは、配送方法である。つまり、着払か、送料込か、からはじまり、どの配送業者の、どのサービスを使うか、ということである。そして、この配送方法は、配送料はもちろんのこと、梱包とも

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            • メルカリの世界:07 「ごみ」から「在庫」へ

               さて、そんな昨年暮れの大掃除は、コロナ禍で自宅にいる時間が増えたこともあり、例年になく大掛かりに実施した。いつか使うかもしれないと、納戸に保管しておきながら、ほとんど使ってないものや、箪笥や押入の奥底にしまい込んで忘れているものなんかも、改めて引っ張り出してみた。  捨てるか否かを分別し、廃棄の決断を下した最前列に鎮座していたものに、大量の紙袋があった。そう、百貨店などの買物で、ほぼ漏れなくもらえる手提げ袋である。ちなみに、幸いといっていいのだろうが、自治体による「プラス

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              • メルカリの世界:06 メルカリ中毒のはじまり

                 「初売り」事件以来、メルカリにどっぷりと浸かることになった。「いいね!」がついたり、消えたりするたびに一喜一憂し、購入されれば、嬉しさの余り舞い上がる。そして、一刻も早く届けるべく梱包作業に追われ、間髪入れずに配送業者に駆け込んだ。  さすがに寝食を忘れることはなかったが、完全に生活の主導権をメルカリに握られた。それが、年末年始だったこともあり、メルカリ中毒は瞬く間に重症化した。大掃除の最中、日がな一日、携帯電話を握りしめていたような気がする。  携帯電話を握りしめなが

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                • メルカリの世界:05 ごみが売れる!?

                   その瞬間、何が起きたのか、わからなかった。数時間前に出品したはずの商品の一つが、出品リストから忽然と姿を消したのだ。その商品は、こんなものが果たして売れるのか、と半信半疑で出品したものだっただけに、消えた理由が皆目見当もつかなかった。  その商品とは、某百貨店の株主優待券。2,000円の購入で100円割引になるという代物で、40枚綴り。もしかしたら使う機会があるかもしれないと思い、毎年、保管しておくのだが、1枚たりとも使ったことがない。有効期限を迎えれば、ごみ箱に直行して

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                  • メルカリの世界:04 転売ヤーに売る人たち、転売ヤーから買う人たち

                     さて、ここまでは、転売するという側面ばかりに注目してきた。しかし、「売る」と「買う」は表裏一体なので、たとえ転売ヤーに焦点を合わせていても、転売ヤーに売る人たち、そして転売ヤーから買う人たちも視界に入ってくる。そもそも、一部の例外を除いて、転売ヤーは自明ではないので、最初はひたすら、売買現場を観察することになる。  改めて考えてみれば、文化人類学ばりの参与観察が、携帯端末を眺めているだけでできることになる。しかも、観察したい商品に「♡ いいね!」をつけておけば、その商品に

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                    • メルカリの世界:03 底辺転売ヤーの採集方法

                       さて、ここで転売ヤーの採集方法を披露しておこう。といっても、そんな大仰なものではない。単に、気になる商品を、ひたすら観察していたに過ぎない。興味がある商品じゃないと、観察が続かない気がしたということもある。だから、欲しい商品や、売ろうとしていた商品に張り付いてみた。前者は、あわよくば買うため、後者は、売却価格の調査のためである。つまるところ、趣味と実益を兼ねて、暇を見つけては眺めていた。  で、どの商品に張り付いていたのか。これを公開するのは、私生活の一部を曝け出すようで

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                      • メルカリの世界:02 見えてくる底辺転売ヤーの実態

                         本題に入る前に、メルカリ体験を通じた利用実態の観察から、何が見えてくるのか、に言及しておこう。  真っ先に挙げるべきは、転売ヤーの実態であろう※1。ただし、現時点で言及できるのは、底辺の転売ヤーである。「底辺転売ヤー」、こういう言い方が妥当なのか否か、転売の全体像が非常にとらえにくいので、自信がないのだが、少なくとも、この半年という期間で捕捉できた転売ヤーは、自らが転売ヤーであることをひけらかすような態度をとる、つまりは見つけやすい、下品きわまりない連中である。  こや

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                        • メルカリの世界:01 海外からアクセスできない!

                           かねてから、やってみたいと思いつつ、なかなかできなかったことの一つにメルカリがあった。メルカリで「買う」ではなく、「売る」である。出張はおろか、出社もままならないコロナ禍で、ようやくはじめてみることができた。新型コロナウィルスの蔓延で得られた、数少ない恩恵の一つである。  「売る」ことに、二の足を踏んでいたのには、理由がある。それは、出張が多かった、ということに尽きる。とりわけ、購入した商品の取引中に、海外出張した際、メルカリにアクセスすることが非常に困難をきわめた経験が

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                          • 色褪せない企業小説(書評:獅子文六『箱根山』新潮社1962.1[文庫版:講談社1996.2、筑摩書房2017.9])

                             本書は、企業小説の「嚆矢的傑作」(講談社文庫版、表表紙あらすじ)だという。舞台は、戦後の箱根。高度成長を背景に、新興企業が観光開発にしのぎを削る中、翻弄される老舗旅館という構図である。  企業小説というからには、実在する原形がある。作中では、架空の名称を使っているが、企業はもちろんのこと、ホテル、地名なども具体的な存在をもとにしている。本書は、それらを知ってから読むと、一段と楽しみが広がるだろう。登場する企業のほとんどは、現在でも存続しているし、今日の箱根観光でも訪れるで

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                            • 潜入調査の方法(書評:ナンシー関『信仰の現場:すっとこどっこいにヨロシク』角川書店1994.7[文庫版:角川書店1997.6])

                               捧腹絶倒の一冊である。  そんなわけだから、何を書いても本書の魅力を半減、いな、それ以下にさせてしまいそうで、書評なんて書く気が失せる。できることなら筆を執りたくない。が、本書には、現地調査のいろはが詰まりに詰まっているだけに、筆ならぬ、鍵盤を叩かずにはいられなかった。  著者であるナンシー関との出会いは、『週刊文春』だったように思う。彼女の経歴を振り返ってみれば、『ホットドッグ・プレス』などで、目にしていたのかもしれない。が、印象に残っていない。『週刊文春』での連載は

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                              • デザインの効能(書評:山口由美『帝国ホテル・ライト館の謎:天才建築家と日本人たち』集英社、2000.9)

                                 世界に名だたる建築家、フランク・ロイド・ライトが設計した帝国ホテルの旧新館、通称ライト館をめぐる書物は多い。本書もその一つである。ライトは「近代建築の三大巨匠」だけに、その多くが建築に造詣の深い作者によるものが占める中で、本書は異色を放つ。著者である山口由美は、日本のホテルの草分け的存在である箱根富士屋ホテルの創業者一族であり、そこには、著者にとって幼いころから慣れ親しんできたであろうホテル業界からの眼差しがあるからだ。  本書のタイトルにある「謎」を集約すれば、「どうし

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                                • 小説と現実の間(書評:植松三十里『帝国ホテル建築物語』PHP研究所2019.4)

                                   建築の夢、本書を一言で表すならば、そうなるであろうか。本書は、アメリカ人建築家、フランク・ロイド・ライトの設計により1923年に竣工し、その後、1967年に取り壊され、現在ではその一部が、愛知県犬山市にある博物館明治村に移築保存されている帝国ホテル新館、通称ライト館の建設をめぐる小説である。  ライト館の建設が主題なだけに、本書では、ホテル支配人であり工事の総責任者であった林愛作、設計者であり監理者であるライト、その助手を務めた建築家の卵であった遠藤新、黄みを帯びた煉瓦や

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                                  • シンガポールから見たコロナ禍の日本の政策 :華字新聞『聯合早報』社説「日本の脱中国化政策―過度な中国依存からの脱却」を読む

                                     シンガポールは、去る8月9日に建国55周年を迎えた。その余韻冷めやらぬ8月11日に、華字新聞『聯合早報』では「社論:日本啓動避免過度依頼中国行動」と題する社説が掲載された。日本語に訳せば「日本の脱中国化政策―過度な中国依存からの脱却」とでもなろうか。以下では、この社説を手掛かりに、コロナ禍の日本が、シンガポールにどのように映っているのか、また何に注目しているのか、考えてみたい。  なお、「日本企業の脱中国化」に関しては、2020年5月22日の『聯合早報』でも「在華日企“想

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