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ずっと黒い

2022.02.14

バレンタインデーである。

バレンタイン短歌

毎年この短歌をツイートするのは、気に入っているからだ。
《カカオ豆 いくつの言語を経てきみはあの子の「好き」になれたのでしょう》
産地から加工、輸入、販売といった過程の最後が「あの子が渡すチョコ」という、なんか壮大な旅をしている気がするのです。チョコ。
初句を原材料名にして「言語」と続けることで、「産地国」を想像させたり、割と工夫している。

きょう作った短歌はこちら。これは、どちらかと言うとホワイトデー短歌かも知れない。

そう言えば、先日過去に作っていたサイトを眺めていたら、バレンタインデーのエッセイがあった。25年前に書いたらしい。今とそんなに変わっていない。僕に黒歴史はない。ずっと黒いままだから。
載せておきます。


「2月14日」(97.03)

 2月14日が僕にとって意味のある日になったのはいつだろう。

 まだ部室も与えられていなかった高校1年の冬。いつも通りバスケットの練習を終えて、いつも通り駄菓子屋で買い食いして、いつも通り帰るつもりだった。僕の周りに限って言えば、2月14日はそれほど特別な日ではなかった。僕はそれなりに浮き足立っていたけれども、別段あてがあるわけでもなかった。
 少し早く着替え終わった。外は真っ暗だ。(寒いな)と思いながら自転車置場に向かう。自転車の脇に誰かいる。
「あげる」とだけ言われて、小さな布の包みを手渡された。不意打ちだった。
「どうも」
 間の抜けた返事と引き換えに、その包みを受け取った。
 同じバスケット部で、同じクラスの子だった。いつも憎まれ口の叩き合いをしていた。思っていることがそのまま言葉になってでてくる女の子だった。僕には彼女がチョコレートをくれる動機がよくわからなかった。
(よっぽどあげる奴がいなかったんだ)と思うことにした。
「ヒューヒュー」
 着替えが終わって、部室から出てきていた先輩たちだった。
「なんて言われた?」と嬉しそうに聞かれた。少し平常心を失っていた僕は「『あげる』って言われました」と、言われたまんまの言葉を答えていた。
「『あげる』だってよお。なんかやらしいぞ、おまえら」と冷やかされた。
「あげる奴がいなかったんですよ。誰かにあげとかなきゃ格好つかなかったんでしょ」と受け流した。本当にそう思っていた。そう考えなければもらう理由がなかった。
 家に帰って包みをあけてみる。こまごまとしたチョコレートと、手紙が入っている。
「バスケットをしている君が、とてもいいと思います」 
 右上がりで勢いのある字だった。色気のない、やたらと元気な筆跡だった。
 (「いい」ってどういうことだろう)と思った。嬉しかったけれども、やっぱりどう解釈していいのかわからなかった。
 それがきっかけとなったかどうかは定かではないが、その年の夏、僕は彼女とつきあうことになっていた。
 なぜ、こんなことを覚えているのだろう。年に一度は2月14日なわけだし、その後だって何度かはそれなりの過ごし方をしているはずなのに。それらはほとんど思い出せない。
 これは「高校」という空間と時間の為せるわざなのだろうか。それとも彼女の性格や印象のせいなのだろうか。

 ところで、2月14日が僕にとって「ただ寒いだけの日」になったのはいつからだろう。


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