金とハンバーガーとトーク
2024.06.30
宿泊したボロ……いや、味のありすぎるホテルは、9時チェックアウトだった。(味はありすぎたけれど、値段と僕がホテルに求めるものとを総合的に判断すると、次回があれば、またここになる可能性が高い)
8時すぎにチェックアウトして、駅のほうへ歩き始めた。雨だ。
雨避けも兼ねて、とりあえず地下街に入った。
きょうは岐阜・各務原のカクカクブックスさんで14時からトークイベントだったんだけど、それ以外に何をするかは、何ひとつ決めていなかった。
結構な時間を潰す必要がある。
そのようなわけで、モーニングでも食べながら何をするか考えるか、と聞いたことがない、でもチェーン店っぽい「ダフネ珈琲」に入ってみる。(あとで調べたら名古屋では老舗のコーヒー屋さんらしい)
モーニングのトーストに付けるものが「ジャム」と「あんこ」を選べるのが名古屋っぽい。むろん「あんこ」で注文。
特に何をするかの考えもまとまらずに、「まあ、カクカクブックスさんのほうに近づいていくか」と店を出る。
まずはJRで「岐阜」に行かねばならない。
名古屋と岐阜は意外と近い。
岐阜に到着。いったん駅の外に出てみる。
おお……。金の織田信長。なんというか……品がない。これは建てるときにきっと揉めたに違いない。
なんとなく駅にあった地図を見てみると「金華山」という山があって、どうやらそこに「ロープウェイ」が通っているらしい。ここに行ってみるか。距離は……4キロ程度。歩いて1時間強。雨はそこそこ降っている。まあ、ひとまずそっちに向かって歩いてみよう。
駅の真ん前に繊維問屋街がある。あと大きな通りには結構な広範囲で、雨避けのような屋根がついている。
あと、なんか地名にやたら「金」が付いてる印象。
ぼんやり街の様子を見ながら歩いていると、商店街を発見。何を隠そう、僕は商店街がすごく好きなのだ。それは、たぶんロープウェイよりも。
……ということで、ロープウェイは取りやめて、商店街をぶらぶらすることに。まだ10時前だから? 日曜日だから? シャッターが閉まっているところが多かったけど、それでも商店街は歩くだけで楽しい。
そんな感じで雨の中、結構な距離を歩いて、岐阜駅に戻ってきた。まだ早いけど、カクカクブックスさんの最寄駅「那加」に向かおう。
JR線で2駅。電車に乗り込むと、2両編成のワンマン列車。適当に座って出発を待つ。
出発してからの車内アナウンスで「この電車、なんか降りかたが特殊だ……」と、気づいた。
アナウンスでは「前の車両の一番前の出口から降車ください。ランプがついたら『開く』ボタンを押してドアを開けてください」「交通系カードは運転手に提示して、駅の改札で支払ってください」的なことを言っていたような気がする。
ああ、ひとつ目の駅に着いてしまった。いま座っているのは2両目の車両なので、この駅で降りた人の降りかたを参考にすることはできなかった。
(……まてよ? このひとつ前の駅は無人駅だから、例外的にちょっと複雑な手順なだけであって、「那加駅」はもう少し大きな駅で、通常の電車のような降りかたなのかもしれないぞ)と、希望に満ちた予想と解釈をしながら、次の那加駅に着いた。
あ、全然例外的じゃなくて、前の駅と同じ降りかたをするんだ。幸いなことに、他にも降りる人がいて、その人たちについていったのでだいじょうぶだった。
このとき11時少し前。
さて……。駅前にも特にお店もない。
先日、各務原のことを調べたときに、たまたま見つけた、食べログで「百名店2024」に選出されたハンバーガー屋さんがあるはずだ。そこでお昼を食べることにしよう。
調べると11時30分開店。あと30分か……。歩こう。
キョロキョロしながら歩いているときに、気づいた。
「あれ? 手土産に持ってきた『クルミッ子』の手提げ袋がないぞ……」
たぶん、さっきのワンマン電車の降りかたでオタオタしているときに、席に忘れてきたんだな……。
……は! そういえば、雨の雫がついて鬱陶しいからメガネを外して、クルミッ子の袋に入れてたんだった!
まあ……度が合わなくなっていて、買い替えようと思っていたし、いいか。
旅先でメガネをなくすのは、二度目だ。……というか、旅先でなくす以外にメガネを買い替えたことがない。
ややしょんぼりしながら、お店に到着。お店の前で開店をしばらく待って、2組目の客として入店。カウンター席に座った。トッピングとか、サイドメニューとか、黒板に書かれてるんだけど、メガネもないし、いっぱい歩いて判断力も低下していて考えるのが面倒くさかったので、店主さんに「いちばんのおすすめは?」と聞くと「ノンズバーガーですね」「じゃあ、それとコーラで」と決めてから、黒板に書いてあるメニューをきちんと読んでみると「ノンズバーガー:2200円」とあった。
昼飯に払う金額じゃない……は、まだいいとして、食べ切れるだろうか。
ドン! 多分バンズ・目玉焼き・厚切りベーコン・玉ねぎ・チーズ・パテ×2・マッシュポテト・レタス・バンズ、という構成ではなかったか。
これをハンバーガー袋に入れてかぶりつく。
ひとまず「食べにくい」。
ただ「食べにくいことも込みでハンバーガーなのだ」と言われるとそうなのかもしれない。
味は、甘めのソースとしっかり焼かれたバンズがとても美味しくて、結構ぺろっと食べられた。脂質については、無視。
お店から出て、まだ12時。なんか「航空宇宙博物館」なるものがあるらしいんだけど、ちょっと中途半端な時間かもな……と、結局いつもの通り、ただ歩くことで時間を潰す。
知らない街をぼんやり歩くのは、楽しい。
あてもなく歩いていると、ちょっとお腹が痛くなってきた。ああ、これはトイレに行くべき痛みである。脂質を抑えていたのに、突然脂質の洪水みたいなハンバーガーを食べたのがよくなかったのだろうか。
ベトナムのニャチャンでトイレを目指して歩いた、あのときのことがよぎる。
(10年前に初めてベトナムに行ったときの旅行記です。よろしければどうぞ)
いま歩いているところからいちばん近いのは……名鉄の新那加駅らしい。駅に行けばトイレくらいはあるだろう。よし。雨の中ずんずん歩いて新那加駅にどうにか間に合って到着。事なきを得た。事なきは得たんだけど、ここ駅員さんいない感じだな……。「ピッ」て自動改札で駅内に入ったはいいけれど、そのまま出ることって多分できないよな……。まあ、電車が来たら乗って、適当なところで降りて、駅前に喫茶店でもあれば、そこで時間を潰せばいいか。
次の電車は……三柿野行き……。4つ先の駅か。終点になるような駅だし、なんかあるだろ。
三柿野到着。
……なんもねえ。
まあ、とりあえず一度改札を出て、本当に何にもないことを確認して、また改札から入って、逆方向の電車に乗って、元の新那加駅まで戻った。いったい何をしているのか。
いい感じの道。
そのような右往左往を経て、トークイベント開始の約30分前にカクカクブックスさんに到着。
オーナーの尾関さん夫妻に初めましてのごあいさつ。となりの和室でやりますので、とあがらせていただく。
看板猫のちゃちゃさんは、ものすごくフレンドリーで、会場に入ってくる人全員に挨拶しにいっていた。写真撮るの忘れたな……。
前日まで参加者4名と聞いていたので、「ああ、なんか本当に申し訳ありません……。もう単独でトークイベントとか身の程知らずなことはやりません……」と思っていたんだけど、当日は、10名のかたにご参加いただけて、本当にありがとうございました。
イベントは、尾関加奈子さんがお相手をしてくれることになっているってこと以外、打ち合わせも何もしないまま、開始時間に。まあ、猫がいるし、きのうも話しているし、なんとかなるか、の気持ちで始まった。
結果としては、話したいことはだいたい話せたと思う。
『また猫と 猫の挽歌集』にサインをするときには「生前の猫の写真を眺めてる サイダーをまたサイダーで割る」という短歌を添えることにしている。
割と地味目なこの短歌、自分では珍しく気に入ってるんだけど、尾関さんが「この短歌がいちばん好きです」と言ってくれて嬉しかった。
あと、サインする際に「なにもできないけど 猫よ ここにいる ここにいるからここにいるから」を添えてほしい、というリクエストがあった。
実は、この短歌、自己評価としてはちょっとエモーショナルに傾きすぎているし、単独で読んだときにシチュエーションがわかりにくくて「連作の中の一首」っぽいので、外した方がいいのでは? と編集のおふたりに提言した経緯がある。
おふたりの意見は「残す」だったので、残してよかった。
リクエストしてくれた方は、「いま飼っている猫が病気になったときの気持ちが、本当にこのとおりで、でも自分では言葉にできなくて。それをこうして書いていただけていたので」ということだった。本当に残してよかった……。
参加者の方の中には俳句を作っているかたもいて、ちょっと緊張した。
あと「僕おもリスナーです」という方もいて、「なんかすみません……」とお伝えした。
帰りは、尾関さんに車で岐阜駅まで送っていただいた。
カクカクブックス尾関幸治さん、尾関加奈子さん、本当にありがとうございました!
また機会があればお声掛けいただければ!
そんなこんなで、名古屋に戻ってきて、我が家へのお土産は「ゆかり」と「ひとくち生ういろ」。
晩ごはんはチャオでナポリタン。熱々で美味かった。
帰りもこだまで2時間ほど揺られて帰った。
そういえば帰りの新幹線で、ちょっとのつもりで食べ始めたこのカクカクブックスさんで買ったビスケット、めちゃくちゃ美味しくて、結局新幹線で食べ終えてしまった。
あー、楽しかった!
名古屋・岐阜でお会いできたみなさま、ありがとうございました!
雨なのにめちゃくちゃ歩いた。
ややバズり
ああ、確かに。雰囲気で誤った用語を使ってしまった。恥ずかしい……。ほとぼりが冷めるのを待つしかない。
そんなそんな。